屋内ラドンの健康影響

屋内ラドンで肺がんが増加すると懸念されております。日本の全国平均でみると、屋内ラドン・レベルは欧米の半分以下です。しかし、地域や家屋構造や換気率の違いによって、屋内ラドン・レベルの高い家屋も見つかっております。私たちは、屋内ラドン対策に興味を持っておられる方々向けに基礎資料を提供する目的で、ホームページを立ち上げました。このページでは、世界保健機構 WHO や米国環境保護庁 EPA の文書を紹介するほか、私たちの研究の一端をご紹介します。

鉱山労働者の疫学調査から、坑道内での高いラドン・レベルへの曝露は、肺がんリスクを高めることが判っていました。
しかし、鉱山の数十〜数百分の一の濃度である屋内ラドンでも、リスクが上昇するかどうかを判定するには大きな集団を使った疫学調査が必要となります。このため、今世紀になるまでリスクの有無は判りませんでした。

2003年にLubin博士が北米と中国で実施されていた肺がんと屋内ラドンの9症例対照研究をプール解析し、その結果を発表しました。
2005年にはKrewski博士らが北米の7症例対照研究を再度 詳細にプール解析した結果を報告しました。
そして2006年には Darby 博士らがヨーロッパで実施されていた13症例対照研究のプール解析結果を報告しました。
これらの研究結果はいずれも、屋内ラドンの濃度レベルであっても有意に肺がんリスクが上昇することを報告しました。

これを受けて、世界保健機構 WHO は、屋内ラドンに対するガイドラインを出すべく、活動を開始しております。また、国際原子力機関IAEAは、国際基本安全基準(BSS)の改訂作業にこれらの新知見を反映させようとしています。

一方、日本家屋は密閉度が低く(換気率が高い)、また岩石や土壌中のラジウム濃度が低いこともあり、屋内ラドン・レベルは世界の中で低い方に位置します。しかし、近年、日本においても換気率の低い家屋が増加しており、屋内ラドンの上昇が懸念されております。

私たちは、全国約3900家屋を目標に屋内ラドンの測定調査を開始し、そのデータを基に我が国における屋内ラドンの肺がん寄与の大きさを推計しようと考えています。