No.17003 給食が原因となったノロウイルス食中毒事例

[ 詳細報告 ]

分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2018/03/22
衛研名:和歌山県環境衛生研究センター
発生地域:和歌山県御坊市及び日高郡日高川町
事例発生日:2017/01/26
事例終息日:2017/1/28
発生規模:幼稚園4園,小学校6校,中学校5校および給食調理施設
患者被害報告数:763名(給食調理従事者等を含む)
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGII.17
キーワード:ノロウイルス、食中毒、給食

背景:
ノロウイルスは冬期に流行する感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスで、しばしば食中毒を引き起こす。2015年以降、ノロウイルスGII.P17-GII.17が「新型ノロウイルス」として注目を集めた。和歌山県内でも2016年に入ってGII.17による事例が数件確認されたが、大きな流行には至らず、また2016-2017シーズンにはGII.2が流行の主流となっていた。

概要:
2017年1月26日、医療機関から下痢・嘔吐等を呈している小中学生十数名を診察した旨の連絡が保健所に入った。調査の結果、幼稚園4園,小学校6校および中学校5校で同様の症状を呈する者が急増していることが確認された。いずれも同じ調理施設から給食が提供されており、患者便からはノロウイルスGII.17が検出された。最終的な発症者は、喫食者2,062名の内、763名(いずれも給食調理従事者等を含む)であった。

原因究明:
1月27日に搬入された患者便15検体を検査した結果、いずれもノロウイルスGIIが検出された。また、1月25日に提供された給食が唯一の共通食であることなどから、給食調理施設で調理された給食を原因食品とするノロウイルスGIIの食中毒事例と断定された。

診断:
上記を含むノロウイルスGIIが検出された有症者便の一部についてCOG2F・G2SKR プライマーセットを用いたCapsid NS領域の解析を行った。幼稚園4園,小学校6校、中学校5校および給食調理施設の全てで、患者便からノロウイルスGII.17が確認された。

地研の対応:
幼稚園および小・中学校の有症者便28検体および給食調理施設従業員便34検体について、リアルタイムRT-PCRによるノロウイルスの検出を行った。調理施設従業員便23検体を除く計39検体からノロウイルスGIIを検出した。遺伝子解析により、陽性例のうち従業員便3検体を含む19検体について遺伝子型がGII.17であることを確認した。国立医薬品食品衛生研究所の検査により原因食品と考えられた磯和えの食材(ほうれん草、もやし、野焼きちくわ)および給食調理施設の拭き取り4検体についてはリアルタイムRT-PCR、コンベンショナルRT-PCRおよびnestedリアルタイムPCRによるノロウイルスの検出を試みたがいずれも陰性であった。

行政の対応:
食品衛生法に基づき、給食調理施設の営業者に対して2017年1月28日から14日間の営業停止処分とした。また、報道関係者に食中毒と断定した理由を説明すると共に、ノロウイルスの二次感染予防について啓発記事の掲載を呼びかけた。

地研間の連携:
国立感染症研究所の解析データ・検査法等について、地方衛生研究所全国協議会長から各地方衛生研究所に情報提供がなされた。

国及び国研等との連携:
国立医薬品食品衛生研究所において、1月23日から1月25日までの検食40検体および拭き取り10検体のノロウイルス検査が実施され、1月25日に提供された磯和え1検体からノロウイルスGII.17を検出した。また国立感染症研究所において、給食調理施設従業員便2検体を含む有症者便4検体から検出されたノロウイルスGII.17のVP1 ならびにRdRp 領域の詳細な遺伝子解析がなされた。

事例の教訓・反省:
本事例発生から1ヶ月の間に福岡県久留米市、東京都立川市・小平市および大阪府内でノロウイルスによる食中毒事例がみられた。いずれも本事例の原因食品と考えられる磯和えに用いられたものと同一の業者が加工した刻み海苔が使われており関連性が疑われたが、本事例では刻み海苔の検食は保管されておらず、十分な検証はできなかった。また給食調理従事者が当該給食を喫食していたことも、感染経路の究明を困難にした一因と考えられた。

現在の状況:
特記事項無し

今後の課題:
当所ではノロウイルスによる食中毒が発生した際に食品や拭き取り検体からノロウイルスを検出した実績が無く、また近年は検査を実施することも少なくなっていた。今後は食中毒発生時に食品・拭き取りの検査依頼が増えることも考えられ、検査体制の整備が課題として考えられる。

問題点:

関連資料:

  • 籔野敬史,和歌山県御坊市での「磯和え」によるノロウイルス食中毒の概要と行政対応について,食品衛生研究,Vol.67,No.11,15-21(2017)
  • 濱島洋介ら,和歌山県における2016/2017シーズンのノロウイルス流行について,和歌山県環境衛生研究センター年報,第63巻(平成28年度)
  • 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会配付資料, 資料1 平成28年食中毒発生状況概要版,平成29年3月16日