No.17013 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)発生事例について

[ 詳細報告 ]

分野名:ウイルス性感染症
登録日:2017/04/04
最終更新日:2019/03/04
衛研名:宮崎県衛生環境研究所
発生地域:宮崎県内
事例発生日:2016/09/06
事例終息日:報告日現在継続中
発生規模:
患者被害報告数:15名
死亡者数:4名
原因物質:SFTSウイルス
キーワード:重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)、消化器症状、血小板減少、白血球数減少、刺し口

背景:
宮崎県は、SFTS発生数が全国の都道府県中最も多い。

概要:
宮崎県では、平成29年8月以降15名のSFTS発生事例が確認され、そのうち、4名が死亡例であった。(2018年10月29日時点)
患者年齢は20歳代1名、40歳代1名、60歳代1名、70歳代6名、80歳代3名、90歳代3名であった。死亡患者年齢は、60歳代1名、80歳代2名、90歳代1名であった。
全症例で白血球減少(4000/㎕以下)が確認され、14名で38℃以上の発熱、13名で血小板減少(10万/㎕以下)、10名で消化器症状(下痢6名、嘔吐3名、下痢・嘔吐1名)が確認された。刺し口は有りが3名、無しもしくは不明が12名であった。
発生月は8月(5名)、9月(1名)、3月(1名)、4月(2名)、5月(5名)、6月(1名)であり、発生は県内北部から南部と偏りは見られていない。
死亡患者の発生月は3月、4月、5月で、発生場所は県北部、県中部、県南部と発生月、発生場所共に偏りは見られていない。

原因究明:
管轄保健所と協力し、患者及び家族、担当医らから推定感染時の場所、作業内容等の聞き取り調査を実施している。

診断:
定性:RT-PCR

地研の対応:
管轄保健所から検査依頼を受けた際には、速やかに検査を実施、結果を回答している。
保健所及び医療機関からの疑義照会に対し、検査方法をはじめとした正確な情報の提供を行っている。

行政の対応:
県のホームページ上で患者の推定感染地等について公表すると共に、県民に対し、ポスター及びマスコミ等を使ったマダニに噛まれないための対策の注意喚起を実施している。

地研間の連携:
2018年9月に設立されたSFTS学術研究会に参加するとともに、九州内の地方衛生研究所を中心に情報の共有を図っている。

国及び国研等との連携:
RT-PCRによる判定が難しい検体については、国立感染症研究所に検体を送付し、確認検査を依頼している。

事例の教訓・反省:
第1例発生以降、県民に対しSFTS及びマダニに対する注意喚起を実施しているが、患者は現在も年間10例前後発生しているため、さらなる周知方法の検討が必要であり、衛生環境研究所として有益な調査結果の提供に努めたい。

現在の状況:
RT-PCR法による検査について、技術的な問題はない。
当県で発生した患者から分離したSFTSウイルスを抗原として用い、抗体検査法の検討を行っている。IFA、ELISA等抗体検査に必要な設備は整備されている。

今後の課題:
SFTSウイルスはマダニと動物で感染環を形成し、ヒトが入ることによってヒトが感染、発症するとされている。推定感染時の行動状況はほとんど野外での作業(散歩等も含め)であり、これらの際のマダニ対策の注意喚起が必要である。同時に愛玩動物であるイヌやネコからの感染事例も報告されているため、これらの新たな感染経路についても対策の検討が必要となってきている。

問題点:
診察をする医師、獣医師、地方衛生研究所、行政機関との緊密な連携

関連資料:
宮崎県衛生環境研究所年報「SFTS検査依頼件数及び届出保健所別検出件数」、「SFTS患者発生状況」