No.19003 ヒガンバナの葉による食中毒

[詳細報告]

分野名 自然毒等による食中毒
衛研名 千葉県衛生研究所
報告者 食品化学研究室 
事例終息 事例終息
事例発生日 2019/03/11
事例終息日 2019/03/14
発生地域 千葉県長生保健所管内
発生規模 1家族2名喫食
患者被害報告数 2名
死亡者数 0名
原因物質 ヒガンバナの葉(ガランタミン)
キーワード ヒガンバナ、リコリン、ガランタミン

概要:
 千葉県長生保健所管内の1家族2名が、自宅庭で自生していた植物をニラと誤って採取し、2019年3月11日にみそ汁の具材として喫食したところ、同日吐き気、嘔吐の症状を呈した。同保健所の調査の結果、原材料の残品がヒガンバナの葉と同定されたこと、原材料及びみそ汁の残品からヒガンバナの有毒成分であるガランタミンが検出されたこと、患者の発症状況がヒガンバナによる食中毒の特徴と一致したことから、同保健所は、ヒガンバナの葉を使用したみそ汁を原因食品とする食中毒と断定した。

背景:
  ヒガンバナ、スイセン、スノーフレークなどのヒガンバナ科植物には、有毒成分のアルカロイド(リコリン、ガランタミンなど)が含まれる。喫食後30分以内に、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などの食中毒症状が見られ、葉はニラ、鱗茎はタマネギなどと誤食されることがある。スイセンの誤食による食中毒は散発するが、ヒガンバナによる事例は非常に稀であったため、報告する。

地研の対応:
 食品残品、原材料の残品の検査を実施した。千葉県立中央博物館により原材料の残品がヒガンバナの葉の一部と同定されたことから、ヒガンバナに含有されている、リコリン、ガランタミンの定量を行った。

行政の対応:
・探知
 2019年3月11日午後2時頃、患者から千葉県長生保健所宛てにニラ様植物による食中毒疑いの届出があり、探知した。
・患者調査
 2019年3月11日午後3時、千葉県長生保健所において、患者2名の聴き取り調査を実施した。
・検査
(1)千葉県衛生研究所において、ニラ様植物(食品残品及び原材料)の理化学検査を実施したところ、いずれからもガランタミンを検出した。
  (2)千葉県立中央博物館にニラ様植物の鑑定を依頼したところ、ヒガンバナ(Lycoris radiate(L.Hér.)Herbert)の葉の一部と同定された。
・公表  2019年3月14日

原因究明:
 患者は自宅庭に自生しているニラを日常的に採取、喫食しており、ニラに関する一定の知識は持っていた。しかし、今回採取したヒガンバナは日光が当たらず黄化しており、患者は黄ニラであると判断してしまった。また、ヒガンバナは花が枯れた後の秋から春にかけて葉を繁らせる性質を持っており、花と葉が同時には確認できない。葉は細長い扁平状であり、外見がニラの葉に類似していることから、誤食につながったものと推定される。

診断:
 搬入された検体について、リコリン及びガランタミンをLC-MS/MSで分析したところ、食品残品(みそ汁の中に入っていたニラ様植物)はリコリン不検出、ガランタミン0.11µg/g、原材料の残品(ニラ様植物)はリコリン不検出、ガランタミン0.81µg/gであった。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
特になし

現在の状況:
健康危機事案に迅速な対応ができるよう分析法の検討に取り組んでいる。

今後の課題:
多種の自然毒の標準品を確保し、分析法の検討をする必要がある。

問題点:
特になし

関連資料:
食品衛生検査指針 理化学編 2015