No.20001 比較的低濃度のヒスタミンによる食中毒事例

[ 詳細報告 ]

分野名:化学物質による食品汚染
衛研名:仙台市衛生研究所
報告者:理化学課 食品係 関根 百合子
事例終息:事例終息
事例発生日:2020/11/26
事例終息日:2019/11/26
発生地域:仙台市
発生規模:喫食者 144名(小児:117名、成人:27名)  発症者の内訳は下表のとおり。 年齢 発症者数 喫食者数 0 0 1
患者被害報告数:15名
死亡者数:0名
原因物質:ヒスタミン
キーワード:低濃度、ヒスタミン、保育所、ブリ

概要:
  市内保育所で提供された給食を喫食した約1時間後、園児たちが顔面紅潮、じんましん等の症状を呈した。喫食者は小児117名、成人27名であったが、発症者はすべて小児であった。発症者全員が喫食していたものに「ブリの甘酒みそ焼き」があったため、冷凍保存されていた当該食品の残品について不揮発性アミン類の分析を行った結果、ヒスタミンが21mg/100g検出された。食中毒発症の目安濃度とされる100mg/100gと比較して低濃度であったが、発症者が小児のみであったことから、感受性の差が発症の有無に影響したものと考えられた。
  なお、提供された給食の内容は以下のとおりであった。
 ブリの甘酒みそ焼き、小松菜のごまあえ、大根と豆腐の味噌汁、カブのぬか漬け、ごはん、リンゴ

背景:
 ヒスタミンによる食中毒の発症目安濃度は一般的に100mg/100g程度とされているが、仙台市では過去に病院給食の残品のヒスタミン濃度が32mg/100gでの発症事例があった。その事例での発症者はすべて結核治療薬イソニアジドを服用していたため低濃度で発症したと考えられたが、全国で発生したヒスタミン食中毒の多くは100mg/100g程度を超えた食品によるものである。今回、薬物の影響によらない低濃度の発症事例を経験したので報告する。

地研の対応:
不揮発性アミン類の分析(単位:mg/100g)(不検出は定量下限値未満)

ブリの甘酒みそ焼き(残 品)

味 噌
(参考品)

定量下限値

ヒスタミン

21

不検出

5.0

カダベリン

0.9

 不検出

0.4

プトレシン

不検出

不検出

0.4

チラミン

不検出

不検出

2.0

スペルミジン

不検出

不検出

0.4

行政の対応:
給食施設のみ3日間の業務停止処分。
原因究明に記すように、解凍方法によりヒスタミン生成が助長された可能性があったため、解凍時間の管理を行うよう指導した。

原因究明:
 発症者の喫食した共通食品が当該保育所の給食のみであったこと、発症者全員が「ブリの甘酒みそ焼き」を喫食していたこと、残品からヒスタミンが検出されたこと、症状及び発症までの時間がヒスタミンによる食中毒症状と一致していたこと、によりヒスタミンによる食中毒であると断定された。なお保健所の調査においては、同系列の保育所でも同ロットのブリを食材として使用されていたが発症者がいなかったことを確認している。1)原因施設であった保育所においては解凍を流水で行っており、同系列の保育所で行っていた冷蔵庫内での解凍と比較して高い温度に晒されたこと、2)日によって切り身の大きさが異なるが、当日のものは大きめで厚かったため解凍に長時間要したこと、の2点によりヒスタミンが生成されやすかった可能性があった。

診断:
 不揮発性アミン類の蛍光ラベル化による高速液体クロマトグラフを用いた定量分析

地研間の連携:
 特になし

国及び国研等との連携:
 特になし

事例の教訓・反省:
  過去に同程度のヒスタミン濃度での発症事例があったものの、古い事例だったこともあり食品衛生関係職員全体には共有されていなかった。そのため、「ブリの甘酒みそ焼き」以外にも原因があるのではないか、との見解もあり、断定まで多少時間を要した。

現在の状況:
ヒスタミン定量を実施可能な人数:3名、分析機器:高速液体クロマトグラフ

今後の課題:
 ヒスタミンによる食中毒の発症濃度の目安を100mg/100gとする文献が多い。また、発症に至る絶対量として約20mg超との文献値もある。一方今回は、ばらつきが多いと推定されるものの、計算上の絶対量として園児一人あたり7mg程度の摂取であったこととなり、これまでの事例と比較してかなり低い値であったと考えられる。1)ヒスタミン以外の共存するアミン類濃度、2)喫食量、3)喫食者の年齢や服薬内容等を含めた感受性、また、4)食材の取扱い過程で急激に増加することがあるといったヒスタミン生成に関する性質、など複数の要因を考慮し、数値を柔軟に捉える必要があると思われる

問題点:
 特になし

関連資料:
 特になし

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