No.21003 古いステンレス製やかんで調製した酸性飲料による銅の食中毒

分野名:化学物質による食品汚染
衛研名:大分県衛生環境研究センター
報告者:
事例終息:事例終息
事例発生日:2020/07/06
事例終息日:2020/07/06
発生地域:大分県臼杵市
発生規模:
患者被害報告数:13名
死亡者数:0名
原因物質:銅
キーワード:銅、やかん、スポーツドリンク、酸性飲料、金属製容器、高齢者福祉施設

概要:
高齢者福祉施設で調製したイオンドリンクを喫食した施設利用者13名全員が嘔吐・嘔気症状を呈し、診察医師から当該ドリンクによる金属中毒の疑いがある旨保健所に届出があった。 保健所調査により、イオンドリンクの調製は約10年間使用していた古いステンレス(SUS304)製やかんで行ったこと、当該やかんは日2回の湯沸かしのほか、まれに玄米茶の調製等に使用しているが、イオンドリンクをやかん内で直接調製したのは初めてだったことを確認。また、患者のドリンク喫食量は約100mLで発症までの時間は約1時間であった。 当該やかん及びドリンク残品(pH4、本来の色と異なり緑青色)を検体として当センターで分析したところ、ドリンク残品から200mg/Lの銅を検出したことから、銅による食中毒と判断した。  

地研の対応:
やかん内面上部に黒ずみ部分が残っていたことから、本箇所を境に上下2回の溶出試験(「食品衛生検査指針 理化学編(2015)」)を実施し、各溶出液とドリンク残品についてICP発光分析装置による定量分析(「JIS K 0102 52.4 ICP発光分光分析法」)を行った。分析結果は、ドリンク残品で200mg/L、溶出液(下)で1.4mg/L、溶出液(上)で1.6mg/Lの銅を定量した。

行政の対応:
当該高齢者施設に対し、酸性飲料を古い金属容器で調製や保管をしないよう指導を行った。また、その他の高齢者福祉施設に対し、本件の周知と注意喚起を行った。

国及び国研等との連携:
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会及び全国食品衛生監視員研修会研究発表にて事例報告。

事例の教訓・反省:
診察医師から金属中毒疑いとの情報があったため、迅速な原因物質の特定につながった。

関連資料:
1 糸川嘉典(編集者)、ミネラルの事典、248-262(2003)
2  平成22年度全国食品衛生監視員研修会研究発表会、有機酸を含む飲料の金属製容器での取扱いについて 岡山県美作保健所 岡野光利(抄録)
3 下井 俊子 他:東京都健康安全研究センター研究年報,60,205-211 (2009)
4 ASM handbook,Vol.13B''Corrosion:Materials",p.65,ASM International,(2005)  

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