保健医療科学 長野圏域に居住する医療的ケア児の災害対策及び自治体の支援体制の現状と課題の検討(2023年6月)

『保健医療科学』 2023 第72巻 第2号 p.164-166(2023年5月)

<研修報告>
令和 4 年度専門課程I
保健福祉行政分野

長野圏域に居住する医療的ケア児の災害対策及び自治体の支援体制の現状と課題の検討

長瀬有紀

Disaster preparedness for children with medical care living in Nagano area and current situation and challenges of support system of local government

NAGASE Aki

抄録
目的:長野圏域に居住する医療的ケア児とその家族の災害対策について,自主的取組,避難行動要支援者名簿登録及び個別避難計画策定の状況を把握するとともに,自治体の医療的ケア児への災害対策の状況を整理し課題を検討する.
方法:長野県が小児慢性特定疾患医療受給者家族に対し行ったアンケート調査データ及び長野保健福祉事務所が管内自治体に実施した調査データを二次利用し,分析を行った.
結果:小児慢性特定疾患医療受給者家族で医療的ケア児を有する回答者の74.5%がハザードマップの
確認を,69.3%の者は災害対策物品の準備を行っており,11.1%が個別避難計画を作成または検討中であった.医療的ケアの有無による各災害対策に差があるか検討したところ,「家族のみでの避難」「災害要支援者名簿登録」「個別避難計画作成」で有意な差が認められ,家族のみで避難できないとした回答者において支援者名簿への登録の割合が高かった.自治体の対策状況では,医療的ケア児の災害要援護者への位置付け,個別避難計画作成は 2 自治体(22.2%)で行われていた.計画未作成の理由として,対象者が障害者手帳保持者であることや,人材・ノウハウの不足があげられた.
結論:医療的ケア無しの家庭より割合は低いが医療的ケア児家族でも災害対策を行っていない家庭が一定数存在している一方で,調査対象者での災害要支援者名簿登録や個別避難計画作成済の者の割合は全体的に低かった.医療的ケア児の災害時要援護者への位置づけ,計画作成のノウハウや人材確保が今後の課題と考えられた.

キーワード:医療的ケア児,災害対策,災害時支援,個別避難計画

長野圏域に居住する医療的ケア児の災害対策及び自治体の支援体制の現状と課題の検討

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