家庭用接着剤でのトリブチルスズ化合物基準超過

No.1480 家庭用接着剤でのトリブチルスズ化合物基準超過

分野名:
登録日:2016年03月08日
最終更新日:2016年03月09日
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:大阪市(製造元)、全国(販売先)
事例発生日:2009年7月21日
事例終息日:
発生規模:自主回収対象製品:接着剤870万本
患者被害報告数:なし
死亡者数:
原因物質:トリブチルスズ化合物(TBT)
キーワード:家庭用品、トリブチルスズ化合物

背景:「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」では、家庭用品にトリブチルスズ化合物(TBT)及びトリフェニルスズ化合物(TPT)を使用することが禁止され、公定法も定められた。現公定法は、フレームレス原子吸光法(AAS)でスズ量を測定し、1オg/g以上のスズが検出された場合、2次元薄層クロマトグラフ法(TLC)で展開した後、ジチゾンで発色させて確認する方法である。しかし、公定法に従って分析すると、スズが検出されるが、ジチゾン錯体が発色後速やかに消失するなど、スズの種類が判定出来ない場合が多い。特に、使用禁止ではないジブチルスズ化合物(DBT)やジオクチルスズ化合物が大量に共存する場合には、その判定は一層困難となる。そこで、公定法の改定のために、GC/MS法による新規分析法を開発していたところ、接着剤1製品から公定法で規定されている濃度以上のTBTが検出された。

概要:C/MS法による新規分析法を開発していたところ、大阪市内の会社が製造した家庭用接着剤より「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規定されている濃度以上のTBTが検出された。そこで、当該会社製の同一商品名で、製造日の異なる4種の8製品を収去し、GC/MS法に加えて公定法も実施した。その結果、8製品中2種の4製品について規制違反が確認された。大阪府はその検査結果に基づき、大阪市を通じ製造元に対して通報を行い、それにより製造元は該当する製品の自主回収を実施した。

原因究明:GC/MS法により、当該4製品から数千μg/gレベルのDBTが検出され、10μg/gレベルのTBTが検出された。つまり、接着剤にはDBTが意図的に使用されており、その不純物であるTBTが残存していたことが原因であった。

診断:当該接着剤には、数千μg/gレベルのDBTが含有されていた。検出された10μg/gレベルのTBTは、その不純物であると判定した。

地研の対応:行政機関が収去した8製品を、開発したGC/MS法により定量を行った。その結果、4製品からTBT(10μg/gレベル)が検出された。また、それらの製品から、数千μg/gレベルのDBTが検出された。そこで、さらに公定分析法を実施した。確認試験法であるTLC法でのジチゾン噴霧により、数秒間であるが、TBTの発色が確認できた(写真撮影)。また、フレームレス原子吸光法によるスズの定量を行い、規定されている濃度以上のスズが検出された。

行政の対応:大阪市及び製造元に対して通報を行った。それにより製造元は該当する製品の自主回収を実施した。

地研間の連携:国立衛研と地方衛生研究所5機関が、同一方法で同一試料を用いてラウンドロビンテストを行っていく予定である。

国及び国研等との連携:国立衛研と並行して、新規分析法の開発を実施してきた。

事例の教訓・反省:行政措置を伴う分析法としては、現公定法だけでは確実な検証が困難であることが改めて証明できた。従って公定分析法の早急な改定が必要である。

現在の状況:

今後の課題:公定分析法を改定するには、法律の改定が必要なため時間がかかる。また、GC/MSの導入により検出感度は向上するが、意図的に使用していない微量のTBTまで規制していくのかは疑問が残る。

問題点:DBTの不純物である微量なTBTまで規制対象にする必要があるのかは、疑義の余地があると考える。次に、製造業者作成の接着剤のMSDSには、DBTを使用していることや使用化学物質(DBT)の毒性等の記載がなかった。今後、消費者の安全性を確保するためには、MSDS記載内容の充実が必要である。”

関連資料:1)中島晴信、富山健一、河上強志、伊佐間和郎:家庭用品に含有されるトリブチルスズ、トリフェニルスズの分析法-公定分析法の改定にむけて-、薬学雑誌、130(7),945-954(2010).http://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/130/7/945/_pdf/-char/ja/2)河上強志、伊佐間和郎、中島晴信、大嶋智子、土屋利江、松岡厚子:ガスクロマトグラフィー質量分析法による水性塗料および水性接着剤中の有機スズ化合物の分析、薬学雑誌、130(2)

公開日:1970年01月01日

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