No.126 アオヤギが原因と思われるコレラの集団発生関連検査

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:関東
事例発生日:1991年8月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:不明
死亡者数:1名
原因物質:Vibrio cholerae O1
キーワード:コレラ、細菌学的検査、アオヤギ、水産加工所、ビブリオ

背景:
1991年8月千葉県を中心としてコレラ患者の集団発生がみられ、患者発生は1都3県にわたっていた。これらの多くの患者はアオヤギを食しており、横浜市のある水産加工所から出荷されていることが判明した。

概要:
8月23日に千葉県富山町の民宿に宿泊した28名が8月24日から28日にかけて、食中毒様症状を呈し、うち2名から8月30日にコレラ菌が検出された。更に、他の民宿の宿泊客からも新たに3名からコレラ菌が検出された。これとは別に、富浦町在住の女性が8月28日に死亡し検便の結果コレラ菌が検出された。一方、神奈川県においても8月27日にコレラ菌が1名から検出され、更に2名からコレラ菌が検出された。最終的には、この一連の事例は真性患者19名疑似患者3名計22名のコレラ患者をだした。疫学調査の結果、これらの多くの患者は横浜市の水産加工所より出荷されているアオヤギを食していることが判明した。これに伴い横浜市内の水産加工所で管理・保管されていたアオヤギを中心に、コレラを中心とした細菌学的関連検査を行った。
検査の結果コレラ菌は検出されず因果関係は判明しなかった。

原因究明:
検査材料としては、原因食品と疑われたアオヤギを出荷したある水産加工所のアオヤギ96検体とその他の施設から収去されたアオヤギ49検体、アオヤギ以外の魚介類34検体、計179検体。また、水産加工所従業員の糞便と保健所より依頼のあった糞便121検体およびその他ふき取り等の23検体計323検体について検索を行った。その結果、食品からコレラ菌は検出されなかった。ナグビブリオは水産加工所のアオヤギ16検体から検出された。ヒトからの菌分離成績はコレラ菌が1名より検出され、その他腸炎ビブリオが4検体より、サルモネラが1名より検出された。
今回のコレラ患者集団発生事例において、アオヤギを原因食品と推定したが、コレラ菌との因果関係は判明しなかった。

診断:

地研の対応:
衛生研究所の細菌課細菌室の職員で、横浜市内の水産加工所で管理・保管されていたアオヤギを中心に食品、患者等よりコレラ菌検索を中心とした細菌学的関連検査を行った。

行政の対応:
横浜市は衛生局と経済局からなる横浜市コレラ事件合同対策会議を設置した。

地研間の連携:
関係各地方衛生研究所の情報の交換を行った。

国及び国研等との連携:
コレラ菌を国立予防衛生研究所に送付すると共に、O1血清非凝集のコレラ菌(ナグビブリオ)の血清型別を依頼した。

事例の教訓・反省:
今回のようなコレラ患者集団発生事例では、どのようにすれば疫学調査を進められるか問いかけられている事例であると思われる。とりわけ、各自治体間のすみやかな情報交換や菌株の送付が行えるシステムの早期確立である。また、技術的問題として、今日言われている培養困難なコレラ菌の検査法の確立があげられる。

現在の状況:
・インターネットによる文献検索及び情報収集ができるようになった。
・課を超えて緊急時の応援体制で検査を行うことができるようになった。
・危機管理の対応策として、細菌学的検査においても機器の整備が必要であることが分かった。

今後の課題:
・危機管理における局等に対する迅速な情報提供を行うことができる体制の整備
・緊急時検査に対応できる応援体制の構築と平常時の危機管理対応のあり方研修
・迅速かつ正確な検査が可能となるような最新の設備機器の導入と技術の確保
・バイオハザード安全システム下での大量処理施設の整備

問題点:

関連資料:
「1991に千葉県を中心としたコレラ患者発生時の横浜市における細菌学的関連検査」武藤哲典ほか、横浜衛研年報31, 125-130, 1992