No.915 蛍光灯器具用コンデンサーの破裂事故によるPCB曝露事例

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:大阪市 発生場所 事務室
事例発生日:2002年2月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:3名
死亡者数:0名
原因物質:PCB
キーワード:PCB,蛍光灯器具,コンデンサー,血中PCB濃度,血中ダイオキシン類濃度

背景:
1970年代に製造された蛍光灯器具がいまだに使用されており、コンデンサが破裂する事故が時々発生している。

概要:
大阪市内の貸ビルの事務室に設置されていた蛍光灯器具4台(1970年製造,PCB 62g使用)のうち1台のコンデンサーが破裂し、PCBが飛び散った。室内は白煙がこもっている状態になり、強い異臭がした。蛍光灯器具に付着していた液体を採取し、GC-MSにて同定したが、3塩化ビフェニル(TrCB)および4塩化ビフェニル(TeCB)が主成分であった。
A氏(32歳,男)は事故時に蛍光灯器具の斜め下で仕事をしていたため、PCBの飛沫が頭部および衣服に付着、また、机や床に落ちたPCBを雑巾で拭き取ったため、手にも付着した。事故後および翌日も事務室で仕事をしたため、PCBの蒸気およびミストを吸入した。症状は頭痛、食欲不振、不眠であり、3日目の血液検査ではGPT(46U/l)、γ-GTP(65U/l)および中性脂肪(197mg/dl)が正常値を超えていた。また、頭部に発疹が生じていた。3日目以降も、頭痛、不眠が続き、その後、抑鬱状態となり、鬱病、自律神経失調症、偏頭痛と診断されている。
B氏(27歳,男)は事故時はトイレにおり、約5分後に事務室に戻った。A氏と一緒にPCBを雑巾で拭き取ったため、手に付着した。事故後および翌日も事務室で仕事をしたため、PCBの蒸気およびミストを吸入した。症状は頭痛、気分不良、吐き気であり、3日目の血液検査では白血球数(16,000)の増加が認められた。3日目以降も、頭痛が続き、その後、抑鬱状態となり、鬱病、自律神経失調症、偏頭痛と診断されている。
C氏(24歳,女)は事故時は既に帰宅していたので、PCB曝露はなかった。しかし、翌日、事務所で仕事をしため、PCBの蒸気を吸入した。また、机に付着していたPCBを雑巾で拭いたので、手に付着した可能性もある。症状は頭痛、鼻水であり、3日目の血液検査は異常なし。3日目以降も、頭痛が続いていたが、徐々に回復した。
A氏は事故後12日目に、B氏およびC氏は16日目に100mlの血液を採取し、血清中PCB濃度およびダイオキシン類濃度を高分解能GC-MSにて測定した。血清中総PCB濃度はそれぞれ210、170および160ng/g脂肪であり、一般人のレベルであった。しかし、同族体パターンが一般人とは異なり、TrCBおよびTeCB濃度が高く、特にTrCBは一般人の10倍のレベルになっていた。コンデンサーのPCBの主成分がTrCBおよびTeCBであることから考えると、血清中濃度の上昇は事故時の曝露によるものであろう。血清中ダイオキシン類濃度は、毒性等量(TEQ)でそれぞれ23、16および28pgTEQ/g脂肪と一般人のレベルであり、ダイオキシン類の各物質ごとの血清中濃度も一般人のレベルであった。

原因究明:
付着した液体を測定し3塩化および4塩化ビフェニルが主成分であることを確認血中総PCBおよびダイオキシン類濃度が一般人のレベルであることを確認血中3塩化ビフェニルおよび4塩化ビフェニル濃度の上昇を確認

診断:

地研の対応:
現場視察と事故状況の聞き取り,被害者の症状の把握,血中PCB濃度および血中ダイオキシン類濃度の測定,病院の紹介

行政の対応:
特になし

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:
特になし

問題点:

関連資料:
日本産業衛生学会(2003,山口)で報告予定