No.1548 イヌサフラン誤食による食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:北海道立衛生研究所
発生地域:札幌市
事例発生日:2013年6月23日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:植物性自然毒(コルヒチン)
キーワード:イヌサフラン、食中毒、コルヒチン

背景:
イヌサフラン(ユリ科、APG分類系ではイヌサフラン科)は細胞分裂阻害作用を有するコルヒチンを全草に含む有毒植物であるが、秋に大型の花を咲かせることから、コルチカムの名で一般に広く普及し家庭で栽培されている。このため、その近くにギョウジャニンニクなどの山菜を植えていた場合、道内では誤食による死亡事故が発生している。

概要:
患者の姉が自宅庭で栽培していた植物をミョウガと勘違いし、姉妹2人で球根を茹でて食べたところ、患者1名(女性、60代)が腹痛や嘔吐、肝機能障害などの症状を呈した。姉は当該植物を口に含んだが、吐き出したため異常はなかった。北海道立衛生研究所が残っていた球根や葉を検査した結果、イヌサフランと判明した。

原因究明:
北海道立衛生研究所薬用植物園植栽品と直接比較し、葉をイヌサフランと同定した。更に茹でた球根部分をメタノールで抽出し、HPLCで分析したところ、イヌサフランの有毒成分として知られるコルヒチンを約0.4mg/gの濃度で検出した。
患者の症状がイヌサフランを喫食したことによる中毒症状と一致することから、イヌサフランを原因食品とする食中毒であると断定された。

診断:

地研の対応:
札幌市保健所が入手した当該植物の残品(茹でた球根部分及び葉部分)を北海道食品衛生課の依頼により、北海道立衛生研究所が鑑定した。

行政の対応:

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
平成に入ってから道内では今回の事例に限らず、身近な園芸植物を誤食して食中毒を起こす例が多い(平成元年~24年:20件)。このことから、今後は野生有毒植物に限らず、毒を有する園芸植物についてもその危険性を啓発する必要がある。

現在の状況:
北海道立衛生研究所では毒草による食中毒を防止する啓発活動として、北海道食品衛生課及び札幌市保健所と「春の山菜展」を共催している。更に、道内では毒キノコの誤食事故も多発している(平成20年~24年:16件)ことから、それらを化学的に鑑定するための基礎的研究にも取り組んでいる。

今後の課題:
化学的鑑定を実施する際には標準品が不可欠であるが、非常に高価であり、短時間で入手困難なものがある。

問題点:

関連資料:
1) 佐藤正幸,姉帯正樹,南収:道衛研所報,53,82–83(2003)
2) 佐藤正幸,姉帯正樹,南収:道衛研所報,54,107–108(2004)
3) 佐藤正幸,姉帯正樹:道衛研所報,60,45-48(2010)