No.1587 クドア属粘液胞子虫による胃腸炎1

[ 詳細報告 ]
分野名:原虫・寄生虫・衛生動物
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:静岡県環境衛生科学研究所
発生地域:静岡県
事例発生日:2012年9月9日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:有症者数3名
死亡者数:0名
原因物質:Kudoa iwatai(推定)
キーワード:Kudoa iwatai、スズキ、寄生虫、有症苦情事例

背景:
生食用生鮮食品による病因物質原因不明有症苦情事例が多く発生しており、平成23年6月にその原因物質としてヒラメに寄生しているKudoa septempunctataと馬肉に寄生しているSarcocystis fayeriが関与することが示された。しかし、近年はスズキやマグロ等が原因食品として疑われる有症苦情事例が発生しており、それらの事例の残品であるスズキからはK. iwatai、マグロからはK. neothunniが検出されている。

概要:
2012年9月10日、保健所あて医療機関より「1家族3人が医院を受診し、急性胃腸炎と診断されたが食中毒が疑わしい」との連絡があった。保健所の調査によると、9月9日に飲食店で刺身等を喫食した5人中3人が、約6時間の潜伏時間の後、一過性の強い下痢、腹痛、嘔気等の症状を呈していた。検査の結果、既知の病因物質は検出されなかった。スズキの刺身の提供があったことから、K. septempunctata以外のクドア属粘液胞子虫の関与が疑われた。しかし、スズキの刺身の残品は確保できなかったため、患者便3検体と調理従事者便5検体についてDNAを抽出し、クドア属粘液胞子虫(以下、クドア)の18S rDNAを標的としたクドア遺伝子の検出を行ったところ、患者便1検体と調理従事者便2検体からクドア遺伝子が検出された。患者便から検出されたクドア遺伝子の増幅産物についてシークエンス解析を行ったところ、K. iwataiの配列と一致した。クドア遺伝子が検出された調理従事者便2検体については、非特異なバンドが検出されたため、シークエンス解析を行うことができなかった。

原因究明:

診断:

地研の対応:

行政の対応:
9月10日の医療機関からの連絡を受け、管内保健所が調査を行ったところ、9月9日に飲食店で刺身等を喫食した5人中3人が、約6時間の潜伏時間の後、一過性の強い下痢、腹痛、嘔気等の症状を呈していることがわかった。患者便3検体と調理従事者便5検体について、細菌及びウイルス検査を実施したが、既知の病因物質は検出されなかったため、有症苦情事例として処理した。

地研間の連携:
クドア遺伝子検出用プライマーは大阪府立公衆衛生研究所から提供を受けた。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
刺身が原因と疑われる事例であっても、ヒラメの刺身が含まれない場合、クドア属粘液胞子虫の検査をせずに処理されていたが、平成21年7月30日付で厚生労働省医薬品食品安全部監視安全課食中毒被害情報管理室事務連絡により「病因物質不明有症事例の情報収集について」の協力依頼があったことから、生食用生鮮魚介類が原因と疑われる事例に関しては、情報収集及び検体の確保に努めるよう県内保健所あて依頼した。

現在の状況:
K. seputempunctata以外のクドア属粘液胞子虫を対象とした検査法は確立されていなかったが、本県はK. iwataiが検出される事例が本事例を合わせて3件発生していたため、リアルタイムPCR法によるK. iwataiの検出法を確立した。

今後の課題:

問題点:

関連資料: