No.1588 クドア属粘液胞子虫による胃腸炎2

[ 詳細報告 ]
分野名:原虫・寄生虫・衛生動物
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:静岡県環境衛生科学研究所
発生地域:静岡県
事例発生日:2012年10月14日
事例終息日:
発生規模:有症者数6名死亡者数0名
患者被害報告数:有症者数6名
死亡者数:0名
原因物質:Kudoa iwatai(推定)
キーワード:Kudoa iwatai、スズキ、寄生虫、有症苦情事例

背景:
生食用生鮮食品による病因物質原因不明有症苦情事例が多く発生しており、平成23年6月にその原因物質としてヒラメに寄生しているKudoa septempunctataと馬肉に寄生しているSarcocystis fayeriが関与することが示された。しかし、近年はスズキやマグロ等が原因食品として疑われる有症苦情事例が発生しており、それらの事例の残品であるスズキからはK. iwatai、マグロからはK. neothunniが検出されている。

概要:
2012年10月15日、医師より保健所あて食中毒を疑う患者の届出があった。医師によると、10月14日に嘔吐、下痢、発熱の症状を訴える患者5人が受診し、5人は同日昼に同一飲食店で喫食しており、共通して刺身を食べていた。保健所の調査から、10月14日12時過ぎに11名が飲食店で喫食し、同日16~18時の間に6人腹痛、水様性下痢、発熱(38.5℃)、嘔吐などの症状を呈した。患者の共通食は本飲食店の食事のみであり、喫食内容には刺身(マグロ、太刀魚、スズキ)が含まれていたが、残品はマグロのみであったため検査は実施しなかった。また、患者糞便から既知の病因物質は検出されなかった。
スズキの刺身の残品は確保できなかったため、患者便5検体と調理従事者便6検体についてDNAを抽出し、クドア属粘液胞子虫(以下、クドア)の18S rDNAを標的としたPCR法を用いてクドア遺伝子の検出を行った。すると、患者便1検体と調理従事者便3検体からクドア遺伝子が検出され、調理従事者便1検体から検出されたクドア遺伝子の増幅産物についてシークエンス解析を行ったところ、K. iwataiの配列と一致した。クドア遺伝子が検出されたその他の検体については、非特異なバンドが検出されたため、シークエンス解析を行うことができなかった。

原因究明:

診断:

地研の対応:

行政の対応:
10月15日に保健所が医師より情報を探知し、10月16日に立ち入り調査を行った。施設の衛生管理状況は良好であった。施設内の拭取り、調理従事者、配膳従事者の検便を実施したが、基地の病因物質は検出されず、有症苦情として処理した。

地研間の連携:
クドア遺伝子検出用プライマーは大阪府立公衆衛生研究所から提供を受けた。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
ヒラメの刺身の提供がない場合は、刺身が原因と疑われる事例であってもクドア属粘液胞子虫の検査を実施しないケースが多い。しかし、平成21年7月30日付厚生労働省医薬品食品安全部監視安全課食中毒被害情報管理室事務連絡により「病因物質不明有症事例の情報収集について」の協力依頼があったことから、ヒラメ以外の生食用生鮮魚介類が原因と疑われる事例についても、情報収集及び検体確保に努めるよう県内保健所あて協力を依頼した。

現在の状況:
K. seputempunctata以外のクドア属粘液胞子虫は検査法がなかったが、本県はK. iwataiが検出される事例が本事例を合わせて3件発生していたため、リアルタイムPCR法によるK. iwataiの検出法を確立した。

今後の課題:

問題点:

関連資料: