No.1591 大阪府における腸管毒素原性大腸菌(ETEC) O169:H41集団食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:大阪府
事例発生日:2012年9月16日
事例終息日:2012年9月21日
発生規模:調査対象者126名
患者被害報告数:102名
死亡者数:0名
原因物質:腸管毒素原性大腸菌 (ETEC) O169:H41
キーワード:腸管毒素原性大腸菌 (ETEC) O169:H41、食中毒

背景:
腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は開発途上国での主要な下痢症起因菌であるが、近年、先進国の下痢症患者から分離される事例が増えている。特に、ETEC O169:H41が原因とされる食中毒事例や散発下痢症は日本やアメリカで増加傾向にあることから、食品衛生上、本菌の重要性は高まっている。

概要:
2012年9月に大阪府内で、仕出し弁当が原因と考えられるETECによる集団食中毒事例が発生した。患者便、調理従事者便および患者宅で保存された食品よりSTp遺伝子を保有するETECO169:H41が分離された。分離株について薬剤感受性試験およびPFGE解析を実施したところ、すべてがテトラサイクリンのみに耐性を示し、PFGEパターンもすべての株で一致した。

原因究明:
本事例発生の数日前から体調不良を呈していた従業員が、ETEC O169:H41を保菌した状態で調理作業を担当し、手洗い不足が原因で食中毒を引き起こした可能性が高いと考えられた。また、施設所在地の周辺では、本事例発生日を含む2日間にわたり、大規模な祭りが開催されていた。これに合わせ、当該施設では許容量(通常20食)を超えた大量の食事を準備するために、提供の前々日から調理を開始し、調理場以外(座敷客席のテーブル)で盛り付けを行っていたことも判明し、これが高率に患者を発生させる要因であったと推察された。

診断:
特になし

地研の対応:
患者便34検体、調理従事者便4検体、施設内拭き取りサンプル10検体、食品6検体を大阪府立公衆衛生研究所で検査した。また、分離されたETEC O169:H4122株(患者由来19株、調理従事者由来2株および食品由来1株)を供試株とし、薬剤感受性試験、PFGE解析、PCR法によるテトラサイクリン耐性遺伝子の検出およびプラスミドプロファイルを実施した。

行政の対応:
保健所は施設営業者からの連絡を受けた後、直ちに、当該施設への立入調査、患者への聞き取り調査、検便等の採取を実施した。調査の結果、患者は複数のグループに及ぶことが判明し、患者の共通食は当該施設が調製した料理のみであることが明らかとなった。さらに、患者の発症状況及び症状が類似していることから、保健所は当該施設を原因とする食中毒と断定し、5日間の営業停止を命じた。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
特になし

現在の状況:
特記事項なし

今後の課題:
特になし

問題点:
特になし

関連資料:
Kawatsu, Kazuko Seto, Masumi Taguchi, Yuko Kumeda, A Foodborne Outbreak of Gastrointestinal Illness Caused by Enterotoxigenic Escherichia coli Serotype O169:H41 in Osaka, Japan(2013) Japanese Journal of Infectious Diseases, 66;530-533.