No.1617 小学校におけるA群ロタウイルス感染症集団発生

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:千葉市環境保健研究所
発生地域:千葉市
事例発生日:2014年1月10日
事例終息日:2014年1月27日
発生規模:小学校(児童622名(6学年19クラス)、職員34名の計656名)
児童97名、職員3名の計100名が発症
患者被害報告数:100名
死亡者数:0名
原因物質:A群ロタウイルス
キーワード:A群ロタウイルス、小学校、集団発生

背景:
ロタウイルスは乳幼児における感染性胃腸炎の主要なウイルスであり、一般的に5歳までに一度は感染するものと考えられているが、一度の感染では終生免疫は得られず、複数回発症することが多い。感染を繰り返すたびに軽症化する傾向があり、成人で発症することはまれで、集団発生の場所の多くは保育所や幼稚園である。

概要:
2014年1月10日から1月27日にかけて小学校の児童97名、職員3名の計100名が下痢・嘔吐などの胃腸炎を発症した。発症者のピークは1月12日の13名であり、児童97名の発症者は6学年すべての学年にみられ、内訳は1年生27名、2年生10名、3年生18名、4年生14名、5年生19名、6年生9名であった。保健所より採取された有症者3名のふん便についてウイルス検索を行ったところ、3名すべてからA群ロタウイルスが検出されたことから、当該ウイルスによる感染性胃腸炎集団発生と判明した。

原因究明:
1月10日に1年生1名が当該小学校の共用スペースで嘔吐し、嘔吐物が適切に処理されていなかったことによるものと推定された。

診断:
イムノクロマト法及びEIA法によりA群ロタウイルスの定性を行った。

地研の対応:
1月17発症者児童から採取された1体(1年1組)及び1月20日に発症者児童から採取された2検体(1年1組、1年2組)の計3検体について、ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、A群ロタウイルスを検査項目として検査を実施し、3検体すべてからA群ロタウイルスを検出した。

行政の対応:
保健所が当該小学校に対し児童が嘔吐した絨毯の張替と周囲の消毒や、施設の換気、手洗い・うがい及び嘔吐物の処理方法などの衛生指導及び疫学調査、検体採取を行った。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
感染症サーベイランスシステム(NESID)を通じて病原微生物検出状況等の情報共有を実施している。

事例の教訓・反省:
ロタウイルスは感染力が非常に強く、10~100個のウイルス粒子で感染が成立すると考えられている。初発患者の嘔吐物中にもウイルスが存在したことが考えられ、嘔吐物を適切に処理できていれば、感染の拡大を防げたものと思われる。公衆衛生的には保育所や幼稚園、小学校などの施設の床材は、平滑で消毒可能な材質を選択することが推奨されるが、怪我などの防止や快適性を求めることから絨毯などの消毒に不適な素材が用いられることは避けられないものである。施設職員が常に児童の体調に留意し、不慮の嘔吐を未然に防ぐことが感染症拡大防止に重要であるとともに、絨毯等の消毒が困難な素材が吐物で汚染された場合の対応マニュアルの整備なども必要なものと考えられる。

現在の状況:
ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルスに対してはリアルタイムRT-PCR法を用いて検査を実施し、陽性検体に対して更にコンベンショナルRT-PCRを実施してシークエンスにより遺伝子型を決定している。また、アデノウイルス、A群ロタウイルスに対してはイムノクロマト法及びEIAA法を用いて検査を実施している。

今後の課題:
A群ロタウイルスに対してはPCRによりG型別検査を行うべく検討している。

問題点:
特になし

関連資料:
なし