No.15029 冷やしキュウリによる腸管出血性大腸菌O157食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/05/13
最終更新日:2016/05/27
衛研名:静岡市環境保健研究所
発生地域:静岡県(静岡市、浜松市を含む)他
事例発生日:2014年7月27日
事例終息日:
発生規模:花火大会の露店で販売された冷やしキュウリを喫食した510名が発症
患者被害報告数:510名(入院者数114名)
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌O157(VT1及びVT2産生)
キーワード:冷やしキュウリ、腸管出血性大腸菌O157、食中毒、花火大会

背景:
腸管出血性大腸菌O157は主要な食中毒原因菌であり、幼児や高齢者を中心に重症化しやすく、時には死者がでることもある。腸管出血性大腸菌は牛などの家畜が保有している場合があり、食肉や食肉からの二次汚染が原因となる可能性があるほか、浅漬けによる大規模食中毒事件も起きている。

概要:
2014年8月1日に静岡市内の医療機関から保健所に下痢、血便、嘔吐等の胃腸症状を呈して入院している患者4名がO157迅速キットで陽性となり、当該患者は2014年7月26日に開催された花火大会の露店で販売された冷やしきゅうりを共通して喫食していることの連絡があった。保健所が直ちに調査を実施し、腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件と判定した。同様に冷やしきゅうりを喫食し、下痢、腹痛、血便等の症状を発症した患者は最終的に510名となった。
この事件では、地域の小児科医で構築されるネットワークが活用され、早期の段階で情報共有されたことが重症患者の多発を防ぐ一助となった。

原因究明:
冷やしキュウリの汚染経路については特定に至らなかったが、漬け込み作業から販売まで、2~3時間外気温に置かれていたこと、一つの容器(バッカン)に数百本もの大量のキュウリを投入して漬け込みを行っていたこと等が被害を拡大させた要因と推測された。また、手洗いやキュウリの洗浄にミネラルウォーターを使用していたことが判明した。手洗い用洗浄液を使用したと証言した従事者は6名中1名のみであったことから、手洗い不十分であった可能性も示唆された。

診断:
培養法により腸管出血性大腸菌O157の定性を行った。

地研の対応:
静岡市内の医療機関で入院している患者4名の菌株を検査し、腸管出血性大腸菌O157(VT1及びVT2産生)であることを確認した。
患者の陰性確認及び二次感染防止のため、患者及び接触者の検便(750検体)を行った。

行政の対応
危機管理本部を設置し、初動期及び危機に備える体制づくりを行った。
保健所で露店の衛生指導及び疫学調査、感染症法に基づく患者等の調査及び検体採取を行った。

地研間の連携:
静岡県、浜松市と情報交換をした。

国及び国研等との連携:
患者便由来菌株や分離株について、国立感染症研究所にMLVA法による遺伝子解析を依頼したところ、すべて同じComplexに分類され、同一集団発生株であることが判明した。
感染症サーベイランスシステム(NESID)を通じて病原微生物検出状況等の情報共有を実施している。

事例の教訓・反省:
本事例では、冷やしキュウリの販売を農産物の簡易な加工品に該当するものとして扱ったが、調査の結果から下処理や漬け込み(調味)を行う複雑な調理工程を有するものであることが判明した。このような処理を行う食品は、漬物の衛生規範で求められている施設においての加工が望ましいと考えられる。

現在の状況:
腸管出血性大腸菌O157は培養法により分離し、ラテックス法またはPCR 法でVTまたはVT遺伝子の検出を行っている。

今後の課題:
検体が大量に搬入された場合の検査の省力化などの対処法を考えておく必要がある。

問題点:
特になし

関連資料:
食中毒事件調査結果詳報、2015.9 食と健康特集1、