No.16008 学校給食センターでのノロウイルスGⅡ.17の食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:ウイルス性食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:福井県衛生環境研究センター
発生地域:福井県
事例発生日:2016年5月
事例終息日:
発生規模:喫食者964名中295名が発症、145名が食中毒患者届出
患者被害報告数:145名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGⅡ.17
キーワード:給食センター、ノロウイルス、GⅡ.17

背景:
福井県内では2015年3月に食中毒疑い事例から、2016年4月に食中毒事例および疑い事例からGⅡ.17が検出されていた。今回はノロウイルスGⅡ.17を原因とする大規模な食中毒事例が発生したので報告する。

概要:
2016年5月に福井県内の学校給食センターを原因施設とする食中毒が発生した。喫食者は8校964名で、その内295名(児童生徒255名と教諭40名)が下痢・嘔吐等の主症状を呈した。有症者はいずれもこの給食センターが調理した5月19日~20日の給食を喫食していた。検便検査の結果、有症者と調理従事者からノロウイルスが検出され、遺伝子型がGⅡ.17で一致した。保存食からはノロウイルスは検出されなかった。

原因究明:
・有症者は当該施設が調理した給食を喫食しており、共通食は当該給食のみであった。
・主症状(下痢、発熱、嘔吐)および、発症時期は同じであり、単一暴露が示唆された。
・当該施設から配食されている学校(8校)に発症の偏りはなく、同地域の給食調理自校式学校(4校)に発症者はいなかった。
・当該施設から配食されている小学校で5/19、20に修学旅行に行って給食を喫食していない生徒および引率教諭の発症者はいなかった。
・複数検体から検出された病原体はノロウイルスGⅡのみであり、有症者便7検体、調理従事者便3検体が陽性であった。
・陽性検体についてダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定したところ、配列は一致しノロウイルスGⅡ.17であった。

以上のことから、当該施設が調理、提供した給食を原因とするノロウイルスGⅡ.17による食中毒と特定した。また、調理従事者3名がノロウイルスに感染しており、調理従事者が食品を汚染させたことによる食中毒と考えられた。

診断:
ノロウイルスGⅡ.17による食中毒

地研の対応:
有症者便10検体(1検体はウイルス検査不可)、調理従事者便11検体について細菌およびウイルス検査を実施した(病原大腸菌、サルモネラ属菌、カンピロバクター、ノロウイルス)。ノロウイルスの検査は厚生労働省通知に従いリアルタイムPCR法を実施した。陽性検体についてはダイレクトシークエンス法によりCapsid領域の塩基配列を決定した。保存食2日分8検体についてパンソルビン・トラップ法を用いてノロウイルスの検査を実施した。

行政の対応:
・保健所は探知した当日(5/22)から調査を開始
・給食センターに対し食品衛生法に基づく行政処分の実施(業務停止命令:5/23~25)
・事件の発生・行政処分の実施について報道機関に公表
・学校および家庭における感染拡大防止対策の指導
・当該施設への指導

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:
ノロウイルスが検出された調理従事者は全員給食を喫食していたため、調理時にウイルスを保有していたのか、給食喫食で感染したのか不明であり、汚染経路の特定はできなかった。

現在の状況:
食品のノロウイルス検査について体制および設備について検討している。

今後の課題:
当該施設については、指導により調理従事者は給食を喫食しないこととなった。保健所は他の施設についても同様に指導しているが、大量調理施設衛生管理マニュアルの「ただし、原因究明に支障をきたさないための措置が講じられている場合はこの限りではない。(毎日の健康調査および検便検査等)」の規定により、調理従事者が給食を喫食している施設は多数存在するため、対応が必要と考えられる。

問題点:

関連資料: