No.16009 飲用水からノロウイルスが検出された食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:ウイルス性食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:福岡県保健環境研究所
発生地域:福岡県内
事例発生日:2016年2月5日
事例終息日:2016年2月19日
発生規模:
患者被害報告数:174名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGⅠ.6
キーワード:飲用水、食中毒、ノロウイルス

背景:
2016年2月に, 福岡県内の飲食店において, 飲用水が原因と疑われるノロウイルスによる食中毒事例が発生した。

概要:
2016年2月5日から19日にかけて、同一の飲食店を利用した202名のうち174名の患者が嘔吐、下痢、発熱等の症状を呈した。患者は2月3日~18日にかけて当飲食店を利用し、2月5日~19日にかけて発病した。潜伏期間は30~36時間が最も多かった。飲物を含めた喫食状況調査では、冷緑茶のオッズ比が高いことから冷緑茶が原因食品として疫学的に推定された。当飲食店では飲用水として井戸水を使用し、冷緑茶の水は蛇口に取り付けた浄水器を通した水を使用していた。

原因究明:
検査の結果、有症者便、従事者便及び飲用水のすべての検体からノロウイルスGI.6が検出された。保健福祉環境事務所の疫学調査及び当所におけるノロウイルス検査と遺伝子解析の結果から、本事例は飲用水を原因とするノロウイルスGI.6による食中毒事例と疑われた。

診断:
有症者便6検体及び従事者便4検体、飲用水1検体についてウイルス検査を実施したところ、すべての検体からノロウイルスGI.6が検出された。また、有症者1名及び従事者1名からはノロウイルスGⅡ.17も検出された。施設ふきとり検体はすべてノロウイルス陰性であった。飲用水中のノロウイルスGI遺伝子をリアルタイムRT-PCR法により定量した結果は、1.1×103コピー/100mLであった。
細菌検査では, 糞便及び施設ふきとり検体はすべて陰性であった。飲用水は大腸菌群陽性, 大腸菌陽性, 一般細菌数75/mLであった。

地研の対応:
有症者便6検体、従事者便4検体、施設拭き取り5検体、飲用水1検体(浄水器を通した井戸水)のノロウイルス及び食中毒細菌の検査を実施した。糞便及び器具の拭き取り検体の検査は、厚生労働省通知法(平成19年5月14日食安監発第0514004号)に準拠し、飲用水からのノロウイルス検出は、国立感染症研究所ポリオウイルス検出マニュアル(陰電荷膜吸着誘出法)に準拠した。

行政の対応:
当該原因施設の営業者に対し、営業停止命令を行うとともに、従事者への衛生教育等を行った。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
井戸水使用が多い地域には特に飲用水の衛生管理に対する啓発も必要と考えられる。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料:
吉冨秀亮ら,飲用水からノロウイルスGI.6が検出された食中毒事例―福岡県 (IASR Vol. 37 p. 159-160: 2016年8月号)