No.16019 フグ食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:名古屋市衛生研究所
発生地域:名古屋市
事例発生日:2016年4月1日
事例終息日:
発生規模:喫食者9名
患者被害報告数:発症者8名
死亡者数:0名
原因物質:フグ毒
キーワード:フグ毒、テトロドトキシン

背景:
フグは体内にテトロドトキシン等のヒトにとって非常に強力な神経毒性物質を蓄積しており、その毒性は,神経,骨格筋の電位依存性Na+チャネルを選択的に阻害することによる。摂取後30分から4時間程度で,唇や舌,指先のしびれ,言語障害,運動失調,知覚麻痺といった中毒症状を呈し、麻痺が進行すると呼吸麻痺で死亡することもあり、過去、死亡事例は多数報告されている。ヒト(体重50 kg)のテトロドトキシンによる最低致死量は2,000 µgと推定されている。

概要:
2016年4月2日(土)市内病院から保健所に「フグ毒様症状を発症した患者2名を診察した」との連絡があった。その後の調査で患者2名は同じ会社の9名グループで市内の飲食店を利用していたことがわかった。9名のグループのうち8名が発症(入院6名)し、症状は口・手足指先のしびれ、嘔吐などであった。発症までの時間は1~12.5時間、回復には1~4日間を要した。

原因究明:
マウス毒性試験の結果、卵巣の煮こごりから93 MU/gのフグ毒を検出した。また、LC-MS/MSによる分析により、卵巣の煮こごりからテトロドトキシンが26.6 µg/g(121 MU/g)が検出された。喫食残品について遺伝子鑑別検査を行いフグ種の同定を行ったところ、むき身はマフグ、身欠きフグとフグ卵巣はトラフグ、フグ干物はシロサバフグであったことが判明した。

診断:
当所における検査結果と疫学調査を併せると、発症者はフグ毒として5,580 MU、テトロドトキシンとして1,230 µgを摂取しており、致死量とされる2,000 µgの6割程度を摂取していた。

地研の対応:
飲食店に残っていた喫食残品(むき身、身欠き、卵巣の煮こごり、干物)について、マウス検定およびLC-MS/MSによる分析を実施した。

行政の対応:
管轄保健所は、医療機関からの食中毒届出を受けた後、直ちに食中毒調査を開始した。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:
患者の血液・尿といった生体試料についてもLC-MS/MSによる分析法を整備する。

問題点:

関連資料:
厚生労働所ホームページ:自然毒のリスクプロファイル
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_01.html
名古屋市衛生研究所報,62,125-131(2016)