平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果について

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当該年報は、平成28年1月1日から同年12月31日の間に、新たに登録された結核患者及び潜在性結核感染症(LTBI)の者と、平成28年12月31日現在に登録されているすべての登録者に関する状況について、感染症サーベイランスシステム(NESID)上の結核登録者情報システムに全国の保健所から入力されたものを、「結核登録者情報調査年報」として取りまとめたものである。

平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果

平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果について

〜表ごとの解説〜

諸外国と日本の結核罹患率について

結核罹患率(人口10万対)は、平成32年までに10以下を目指しているところ、平成28年の結核罹患率は13.9であり、前年と比べ0.5ポイント減少している。
日本の結核罹患率は近隣アジア諸国に比べ低い水準にあり、米国等他の先進国の水準に年々近づいている。(表1)

結核罹患率の都道府県別おもな順位について

 

都道府県別の結核罹患率(人口10万対)は、大阪府、東京都、愛知県、岐阜県、徳島県の順に高く、
山形県、長野県、宮城県、秋田県、福島県の順に低くなっている。
大阪府の結核罹患率は22.0であり、同府の中でも大阪市の罹患率が最も高く、32.8となっている。(表2、表7−2)

 

結核の死亡数及び死亡率の年次推移について

 平成28年の結核による死亡数は1,889人(概数)で、前年の1,956人に比べ67人減少している。
死亡率(人口10万対)は、1.6から1.5に減少したが、死因順位は、29位から28位と、ひとつ順位を上げている。(表3)

 

新登録結核患者数及び罹患率の年次推移について

(1) 平成28年に、新たに結核患者として登録された者の数(新登録結核患者数)は17,625人で、前年より655人(3.6%)減少している。
減少率を見ると、平成26年から平成27年にかけての減少率は6.8%(19,615人→18,280人)であることから、減少幅は3.2ポイント小さくなっている。(表4−1)

(2) 平成28年の罹患率(人口10万対)は13.9であり、前年の14.4より0.5(3.5%)減少している。
減少率を見ると、平成26年から平成27年にかけての減少率は6.5%であることから、減少幅は3.0ポイント小さくなっている。(表4−1、図1)

(3) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は6,642人で、前年より489人(6.9%)減少している。(表4−2)

(4) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率(人口10万対)は5.2であり、前年の5.6より0.4減少している。
菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者が全体に占める割合は37.7%で、前年と比べて1.3ポイント減少している。(表4−2)

年次別・年齢階級別 新登録結核患者数および潜在性結核感染症新登録者数について

(1) 年齢階級別の新登録結核患者数では、0〜14歳の小児結核で8人増加している。また、15〜19歳で27人、20〜29歳で108人増加している。
高齢層では、70〜79歳で最も大きい350人の減少となったが、90歳以上では165人の増加となっている。
各年齢階層別で全体に占める割合は、80〜89歳が29.2%と最も多くなっているが、平成26年以降増加傾向は見られない。
一方、90歳以上では10.5%となっており、増加傾向にある。(表5−1)

(2) 年齢階級別の菌喀痰塗抹陽性肺結核新登録患者数は、10〜19歳で8名の増加であったが、20〜29歳では10人の減少となっている。
減少幅は70〜79歳が最も大きく、156人の減少となっている。各年齢階層別で全体に占める割合は、80〜89歳が33.3%と最も大きくなっている。(表5−2)

(3) 平成28年に登録された小児結核患者(15歳未満)のうち、重症結核例である粟粒結核及び結核性髄膜炎患者数は2人(いずれも0歳児)であったが、うち1人は粟粒結核と結核性髄膜炎の併発であった。(表5−3)

(4) 平成28年に新たに登録された潜在性結核感染症の者の数は7,477人で、前年より802人の増加となっている。
年齢階級別では、60〜69歳で241人の増加と最も大きくなっている。また、20〜29歳でも150人の増加となっている。(表5−4)

(5) 新登録結核患者数に対する潜在性結核感染症新登録者数の比は、14歳以下の年齢で1以上となっており、潜在性結核感染症新登録患者数の方が多くなっている。
15歳以上の年齢階級では、いずれも1未満となっており、新登録結核患者数の方が多くなっている。(表5−5)

(6) 職業別では、全体の潜在性結核感染症新登録者数に占める医療職の割合が、前年の26.8%から24.9%に減少している。
一方、無職・その他が全体に占める割合は、前年の25.2%から27.9%と、平成24年の12.7%から2倍以上の増加となっている。(表5−6)

(7) 外国生まれ新登録結核患者数は、前年から174人増加し、1,338人となった。最も増加したのは20〜29歳であり、前年から147人増加し、712人となっている。
また、20〜29歳の新登録結核患者における外国生まれの者の割合も前年から7.6ポイントの増加し、57.7%となっている。(表5−7)

(8) 外国生まれ新登録結核患者のうち、入国5年以内の者は、前年の505人から103人増加し608人となった。
特に20〜29歳の年齢階級では、前年から81人増加し、432人となっている。(表5−8)

年次別・年齢階級別 結核罹患率について

(1) 年齢階級別の結核罹患率は、高齢層ほど高く、60〜69歳で12.0、70〜79歳で24.5、80〜89歳で60.8、90歳以上では96.3となっている。(表6−1)

(2) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率も、同様に、高齢層ほど高くなっている。70歳代までは10未満であったが、80〜89歳で26.2、90歳以上では45.1となっている。(表6−2)

新登録結核患者数及び結核罹患率 都道府県別・年次推移について



(1) 都道府県別の新登録結核患者数は、47都道府県のうち10の都府県で増加している。
新登録結核患者数が最も多いのは東京都の2,340人で、次いで大阪府の1,945人となっている。(表7−1)

(2) 都道府県別の結核罹患率は、47都道府県のうち12の都府県で増加している。一方、結核低蔓延の水準である罹患率が10を下回った県は、
前年の9県から10県に増えている。最も低い山形県の結核罹患率は7.2となっている。(表7−2)

 

年末時結核登録者数及び有病率の年次推移について

 平成28年末現在の結核登録者数は42,299人と、前年の44,888人より2,589人減少している。
そのうち、活動性全結核の患者数は11,717人と、前年より817人減少している。
また、平成28年末の結核有病率は、前年の9.9から0.7減少し、9.2となっている。(表8)

 

新登録結核患者の疫学的特徴について

<再治療患者>
平成28年新登録結核患者のうちの再治療患者は、千人を下回って908人となっている。
このうち、前回治療年が2000年以降の者は567人で、さらに2010年以降の者が430人と再治療患者のうち47.4%となっている。(表9)

<発見の遅れ>
(ア)  平成28年の新登録肺結核患者のうち有症状の者の中で、受診が遅れる(症状発現から受診までの期間が2か月以上の割合)患者の割合は、19.7%となっている。
このうち30〜59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、受診が遅れる患者の割合は33.3%となっている。(表10−1)

(イ)  診断が遅れる(受診から結核の診断までの期間が1か月以上)患者の割合は、22.0%となっている。(表10−2)

(ウ)  発見が遅れる(症状発現から結核の診断までの期間が3か月以上)患者の割合は、19.6%となっている。(表10−3)

<薬剤耐性>
平成28年の新登録肺結核培養陽性結核患者9,878人のうち、薬剤感受性検査結果が判明した者は7,732人で、78.3%となっている。
このうち、多剤耐性肺結核患者数(INH,RFP両剤耐性の者)は49人で、新登録肺結核培養陽性結核患者の0.5%となっている。
また、薬剤感受性検査結果が判明した者のうち、主要4剤(HRSE)全ての薬剤に対し感受性のある患者の割合は89.7%となっている。(表11)

<糖尿病、HIV合併>
平成28年の新登録結核患者のうち、糖尿病合併患者は2,509人で、新登録結核患者の14.2%となっている。
また、HIV検査を実施した患者は1,600人で、新登録結核患者の9.1%にあたり、このうちHIV陽性は44人で、新登録結核患者の0.2%となっている。(表12)

<医療従事者>
(ア) 平成28年の新登録結核患者のうち、看護師・保健師からの登録患者は191人で、新登録結核患者のうちの1.1%となっている。
年齢階級別では、30〜39歳の層が最も多く、同年齢階級新登録結核患者の5.3%となっている。(表13−1)

(イ)  平成28年の新登録結核患者のうち、医師の登録患者は40人で、新登録結核患者の0.2%となっている。
年齢階級別では、40〜49歳における割合が最も大きく、同年齢階級新登録結核患者の0.7%となっている。(表13−2)

(ウ)  平成28年の新登録結核患者のうち、理学療法士、作業療法士、検査技師、放射線技師など、看護師・保健師・医師以外の者で医療機関に勤務する者の登録患者数は231人で、新登録結核患者の1.3%となっている。
年齢階級別では、30〜39歳における割合が最も大きく、同年齢階級新登録結核患者の5.2%となっている。(表13−3)

<無職臨時日雇など>
平成28年の新登録結核患者のうち、登録時の年齢が20〜59歳であり、登録時の職業が無職臨時日雇等であった者は1,105人で新登録結核患者の23.2%となっている。
年齢階級別での患者数は、高齢層ほど多くなっており、55〜59歳では、同年齢階級の35.9%を占めている。
また、男性の患者に占める無職臨時日雇等の者の割合は55〜59歳が最も割合が大きく、33.5%となっているが、昨年から7.3ポイント減少している。(表14−1、14−2)

 

 

公開日:2017年08月31日

カテゴリー: 結核