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〈出典〉ADA(American Dental Association) Fluoridation Facts (1999)
 翻訳:山下文夫(宮崎県子供の歯を守る会),川崎浩二(長崎大学歯学部)ほか

【質問15】
 大気、水および食品からのフッ化物の摂取総量は、健康に危険を及ぼしますか。

●解答
 米国の至適濃度の水道水フッ素化地域において、大気、水および食品からのフッ化物摂取総量は健康に危険を及ぼしません。

●解説

・大気からのフッ素
 通常、大気中にあるフッ素の濃度は無視できる程度です。米国での大気中のフッ素レベルに関する研究から、大気のフッ素はフッ素総摂取量にはほとんど関係しないことが示されています(101,102)。

・水からのフッ素
 米国の湖沼河川の水、あるいは地下水には天然に存在するフッ素が0.1ppm以下から13ppmと広い範囲レベルで含まれています。7ppmを超える個人使用の井戸水はほとんどありません(102)。米国の公共水道設備は米国環境庁によって監視されていますが、公共水道が4ppmのフッ素レベルを超えないようにしています(97)。米国では水道水のフッ化物至適濃度を0.7〜1.2ppmの範囲に設定しています。この範囲が濃度が効果的にむし歯を減少させ、また軽度の歯牙フッ素症の出現を最小限におさえるのです。至適なフッ素レベルは地理的に一日の最高気温の年平均によって決定します(27)。(このテーマに関するさらなる議論は95) 96) 104) 114) 115) 198) 199) 200) 201) 質問32をご参照ください。)
 水道水フッ素化地域に住む子供たちは、水道水から一日のフッ素摂取の一部を、また食品や他の飲み物に含まれる食事から一部を摂取しています。水道水フッ素化地域では、1mgのフッ素を摂取するために1ppmのフッ素添加水道水を1リットル飲まなければなりません(17,103)。6歳以下の子供たちが飲む飲料水は平均して一日に500ml以下です(103)。それゆえに6歳以下の子供たちは、平均して(1ppmで)至適濃度のフッ素添加水道水から一日に0.5mg以下のフッ素を摂ることになります。
 供給される水のフッ素濃度が、それぞれ8.0ppmと0.4ppmを示すテキサス州のバートレットとキャメロンの長期居住者を対象に、10年間にわたり臓器、骨、組織の検査を含む比較研究が行われました。バートレットの居住者における歯牙フッ素症の高い発症率の他には、フッ素がむし歯予防に推奨されるより明らかに高いフッ素濃度にあっても、長期間フッ化物を摂取した結果は(居住者は平均36.7年高濃度のフッ素の入った飲料水を飲用していました)、臨床的に生理的あるいは機能的影響はなかったことがわかったのです(95)。

・食品中のフッ化物
 米国で新鮮な固形食品に含まれるフッ素は一般に0.01〜1.0ppmの範囲です(104)。鰯のような魚は、骨を食べるならより高いフッ素を摂取するかもしれません。お茶もまた1ppmから6 ppmのフッ素を含むかもしれませんが、それはお茶の量、水のフッ素濃度および抽出時間に関係します(104)。
 至適濃度(1ppm)の水道水フッ素化地域に住んでいる子供たちの(体重に基づいて表わされた)一日の飲食のフッ素摂取量の平均は0.05mg/kg/dayです。すなわち至適濃度の水道水フッ素化未実施地域において、子供たちの平均摂取量は約50%低いのです(74)。至適濃度(1ppm)の水道水フッ素化地域の大人の飲食によるフッ素摂取量は平均1.4〜3.4mg/dayで、フッ素添加されてない地域の平均は0.3〜1.0mg/dayです(74)。
 1990年の再調査で、水道水フッ素化と関連した食品中のフッ素濃度の著しい増加はないことが確認されました(105)。生物学的な食品連鎖によるフッ化物濃度についての疑問に対して、米国国立科学アカデミーは次のように説明しています(106)。実際、家畜は人に対する防御的な障壁となります。体内に残留したフッ素のおよそ99%は骨に貯蔵され、そしていくら高い濃度のフッ素を毎日摂取したとしても軟組織のフッ素濃度はほんの少し上昇するにすぎないのです。それゆえ、過剰のフッ素を摂取した動物の肉やミルクを摂取しても人に対して危険性はほとんどありません。人が消費するために加工された肉や魚は、高いフッ素濃度を示すと思われる細かく砕いた骨を含んでいます。しかしながらこれらの製品に代表される飲食物の全体の割合は、実際のところ非常に小さいものです。米国食品医薬品局は、生後6ヵ月の赤ん坊から大人まで異なる年齢グループにおける平均的な人の実際の14日間のさまざまな食品の消費を表わす「マーケットバスケット」なるものを創っています。飲料水のフッ素濃度が異なるいろんな地域で全国的にマーケットバスケットの研究を行ったところ、水道水フッ素化によって食品中のフッ素濃度はほとんどあるいは全く違いがないことがわかりました(107,108)。

17) Newbrun E. Fluorides and dental caries, 3rd ed. Springfield, Illinois: Charles C. Thomas, publisher; 1986.
27) US Department of Health and Human Services, Centers for Diseases Control, Dental disease Prevention Activity. Water fluoridation: a manual for engineers and technicians. Atlanta; September 1986.
74) Institute of Medicine, Food and Nutrition Board. Dietary reference intakes for calcium, phosphorus, magnesium, vitamin D and fluoride. Report of the Standing committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes. Washington, DC: National Academy Press; (In press).
95) Leone NC, Shimkin MB, Arnold FA, et al. Medical aspects of excessive fluoride in a water supply. Public Health Rep 1954; 69(10): 925-36.
97) 58 Fed. Reg. 68826, 68827(Dec. 29, 1993).
101) Hodge HC, Smith FA. Occupational fluoride exposure. J Occup Med 1977, 19: 12-39.
102) Committee on Biologic Effects of Atmospheric Pollutants. Biologic effects of atmospheric pollutants: fluorides. Washington D.C., National Academy of Sciences 1971: 5-9.
103) Rugg-Gunn AJ. Nutrition and dental health. New York: Oxford University Press; 1993.
104) Whitford GM. The metabolism and toxicity of fluoride, 2nd rev. ed. Monographas in oral science, Vol. 16. Basel, Switzerland: Karger; 1996.
105) Kaminsky LS, Mahoney MC, Leach J, Melius J, Miller MJ. Fluoride: benefits and risks of exposure. Crit Rev Oral Biol Med 1990; 1: 261-81.
106) National Academy of Sciendes. Effects of fluorides in animals. Committee on Animal Nutrition and the subcommittee on Fluorosis, 1974.
107) Pendrys DG, Stamm JW. Relationship of total fluoride intake to bemeficial effects and enamel fluorosis. J Dent Res 1990; 69(Spec Iss): 529-38.
108) Olson RE, ed. Fluoride in food and water. Nutr Rev 1986; 44(7): 233-5.




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