■はじめに

■対象者

■フッ化物洗口の実施方法


■関連事項

■「う蝕予防のためのフッ化物洗口実施マニュアル」




フッ化物洗口ガイドライン

1.はじめに
2.対象者
1) 対象年齢
2) う蝕のリスクの高い児への対応
3.フッ化物洗口の実施方法
1) 器材の準備、洗口剤の調整
2) 洗口練習
3) 洗口の手順
4) 洗口後の注意
4.関連事項
1) フッ化物洗口法と他のフッ化物応用との組み合わせ
2) 薬剤管理上の注意
3) インフォームド・コンセント
4) フッ化物洗口の安全性
5.「う蝕予防のためのフッ化物洗口実施マニュアル」



1.はじめに
 フッ化物応用によるう蝕予防の有効性と安全性は、すでに国内外の多くの研究により示されており、口腔保健向上のためフッ化物の応用は、重要な役割を果たしている。
 わが国においては、世界保健機関(WHO)等の勧告に従って、歯科診療施設等で行うフッ化物歯面塗布法、学校等での公衆衛生的応用法や家庭で行う自己応用法であるフッ化物洗口法というフッ化物応用によるう蝕予防が行われてきた。特に、1970年代からフッ化物洗口を実施している学校施設での児童生徒のう蝕予防に顕著な効果の実績を示し、各自治体の歯科保健施策の一環として、その普及がなされてきた。
 そのメカニズムに関しても、近年、臨床的う蝕の前駆状態である歯の表面の脱灰に対して、フッ化物イオンが再石灰化を促進する有用な手段であることが明らかになっており、う蝕予防におけるフッ化物の役割が改めて注目されている。
 こうした中、平成11年に日本歯科医学会が「フッ化物応用についての総合的な見解」をまとめたことを受け、平成12年度から開始した厚生労働科学研究において、わが国におけるフッ化物の効果的な応用法と安全性の確保についての研究(「歯科疾患の予防技術・治療評価に関するフッ化物応用の総合的研究」)が行われている。
 さらに、第3次国民健康づくり運動である「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)においても歯科保健の「8020運動」がとりあげられ、2010年までの目標値が掲げられている。これらの目標値達成のための具体的方策として、フッ化物の利用が欠かせないことから、EBM(Evidence Based Medicine)の手法に基づいたフッ化物利用について、広く周知することは喫緊の課題となっている。
 このような現状に照らし、従来のフッ化物歯面塗布法に加え、より効果的なフッ化物洗口法の普及を図ることは、「8020」の達成の可能性を飛躍的に高め、国民の口腔保健の向上に大きく寄与できると考えられ、上記の厚生労働科学研究の結果を踏まえ、最新の研究成果を盛り込んだフッ化物洗口について、その具体的な方法を指針の形として定め、歯科臨床や公衆衛生、地域における歯科保健医療関係者に広く周知することとした。

2.対象者
 フッ化物洗口法は、とくに、4歳児から14歳までの期間に実施することがう蝕予防対策として最も大きな効果をもたらすことが示されている。また、成人の歯頸部う蝕や根面う蝕の予防にも効果があることが示されている。

 1) 対象年齢
 4歳から成人、老人まで広く適用される。特に、4歳(幼稚園児)から開始し、14歳(中学生)まで継続することが望ましい。その後の年齢においてもフッ化物は生涯にわたって歯に作用させることが効果的である。

 2) う蝕の発生リスクの高い児(者)への対応
 修復処置した歯のう蝕再発防止や歯列矯正装置装着児の口腔衛生管理など、う蝕の発生リスクの高まった人への利用も効果的である。

3.フッ化物洗口の実施方法
 フッ化物洗口法は、自らでケアするという点では自己応用法(セルフ・ケア)であるが、その高いう蝕予防効果や安全性、さらに高い費用便益率(Cost-Benefit Ratio)等、優れた公衆衛生的特性を示している。特に、地域単位で保育所・幼稚園や小・中学校で集団応用された場合は、公衆衛生特性の高い方法である。なお、集団応用の利点として、保健活動支援プログラムの一環として行うことで長期実施が確保される。

 1) 器材の準備、洗口剤の調製
  施設での集団応用では、学校歯科医等の指導のもと、効果と安全性を確保して実施されなければならない。
 家庭において実施する場合は、かかりつけ歯科医の指導・処方を受けた後、薬局にて洗口剤の交付を受け、用法・用量に従い洗口を行う。

 2) 洗口練習
 フッ化物洗口法の実施に際しては、事前に水で練習させ、飲み込まずに吐き出せさせることが可能になってから開始する。

 3) 洗口の手順
 洗口を実施する場合は、施設職員等の監督の下で行い、5〜10mlの洗口液で約30秒間洗口(ブクブクうがい)する。洗口中は、座って下を向いた姿勢で行い、口腔内のすべての歯にまんべんなく洗口液がゆきわたるように行う。吐き出した洗口液は、そのまま排水口に流してよい。

 4) 洗口後の注意
 洗口後30分間は、うがいや飲食物をとらないようにする。また、集団応用では、調整した洗口液(ポリタンクや分注ポンプ)の残りは、実施のたびに廃棄する。家庭用専用瓶では、一人あたり約1か月間の洗口ができる分量であり、冷暗所に保存する。

4. 関連事項
 1) フッ化物洗口法と他のフッ化物応用との組み合わせ
 フッ化物洗口法と他の局所応用法を組み合わせて実施しても、フッ化物の過剰摂取になることはない。すなわちフッ化物洗口とフッ化物配合歯磨剤及びフッ化物歯面塗布を併用しても、特に問題はない。

 2) 薬剤管理上の注意
 集団応用の場合の薬剤管理は、歯科医師の指導のもと、歯科医師あるいは薬剤師が、薬剤の処方、調剤、計量を行い、施設において厳重に管理する。
 家庭で実施する場合は、歯科医師の指示のもと、保護者が薬剤を管理する。

 3) インフォームド・コンセント
 フッ化物洗口を実施する場合には、本人あるいは保護者に対して、具体的方法、期待される効果、安全性について十分に説明した後、同意を得て行う。

 4) フッ化物洗口の安全性
(1)フッ化物洗口液の誤飲あるいは口腔内残留量と安全性
 本法は、飲用してう蝕予防効果を期待する全身応用ではないが、たとえ誤って全量飲み込んだ場合でもただちに健康被害が発生することはないと考えられている方法であり、急性中毒と慢性中毒試験成績の両面からも理論上の安全性が確保されている。

()急性中毒
 通常の方法であれば、急性中毒の心配はない。
()慢性中毒
 過量摂取によるフッ化物の慢性中毒には、歯と骨のフッ素症がある。歯のフッ素症は、顎骨の中で歯が形成される時期に、長期間継続して過量のフッ化物が摂取されたときに発現する。フッ化物洗口を開始する時期が4歳であっても、永久歯の歯冠部は、ほぼできあがっており、口腔内の残留量が微量であるため、歯のフッ素症は発現しない。骨のフッ素症は、8ppm以上の飲料水を20年以上飲み続けた場合に生じる症状であるので、フッ化物洗口のような微量な口腔内残留量の局所応用では発現することはない

(2)有病者に対するフッ化物洗口
 フッ化物洗口は、うがいが適切に行われる限り、身体が弱い人や障害をもっている人が特にフッ化物の影響を受けやすいということはない。腎疾患の人にも、う蝕予防として奨められる方法である。また、アレルギーの原因となることもない。骨折、ガン、神経系および遺伝系の疾患との関連などは、水道水フッ化物添加(Fluoridation)地域のデータを基にした疫学調査等によって否定されている。

5.  「う蝕予防のためのフッ化物洗口実施マニュアル」
 フッ化物応用に関する、より詳細な情報については、厚生労働科学研究「フッ化物応用に関する総合的研究」班が作成した 「う蝕予防のためのフッ化物洗口実施マニュアル」を参照されたい。






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