No.17014 洗剤が混入された油で揚げたパンによる食中毒

[ 詳細報告 ]

分野名:化学物質による食品汚染
登録日:2017/04/04
最終更新日:2018/03/22
衛研名:仙台市衛生研究所
発生地域:仙台市
事例発生日:2016/06/15
事例終息日:2016/06/16
発生規模:摂食者 12名
患者被害報告数:12名
死亡者数:0名
原因物質:非イオン界面活性剤
キーワード:非イオン界面活性剤、洗剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロプレンアルキルエーテル、揚げ油

背景:
洗剤が誤って食品中に混入したことによる食中毒事例はこれまでも散見されており、保管場所が食用油や調味料と近接していたり、調味料等の空きボトルに洗剤を詰め替えて使用していたことが原因として挙げられる。行政が行う衛生教育の中で、保管場所や容器の見直し等の啓発をしても、なお同様の事例が発生している。

概要:
菓子製造施設で調理された揚げパンを食べた12名が、口唇や舌のしびれ、のどの痛みを訴えた。同一の揚げ油を使用して製造された4品目のパン、及びフライヤーに残っていた揚げ油、のいずれからも非イオン界面活性剤が検出された。厨房内には洗剤(非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)との表示)と食用油が近接して保管されており、それらの外観もよく似ており、フライヤーに食用油を足す際、誤って洗剤を入れたことが原因となった。

原因究明:
1)発症者全員が、当該施設で製造された揚げパンを喫食した直後に発症した。
2)施設から、誤ってフライヤーに洗剤を混入させた旨の報告があった。
3)残品から、施設で使用していたものと同じ種類の界面活性剤が検出された。
以上3点より、原因は揚げ油に混入した非イオン界面活性剤であると断定された。

診断:
非イオン界面活性剤検出(定性)

地研の対応:
1)チオシアン酸コバルト法による試験を実施した。混入した洗剤が入手できなかったため、キャリブレータとしてポリソルベート80を使用し、揚げ油内の洗剤成分に対する試験品の濃度比のみを求めた(定性及び半定量)。
2)高速液体クロマトグラフ質量分析装置により、ポリオキシエチレン鎖を確認した(定性)。

行政の対応:
菓子製造業としての営業停止処分(2日間)を行った。洗剤や消毒剤は食用油と別な場所に保管し、容器の詰め替えを行わないよう指導し、改善を確認した。
なお当該洗剤は、油に加えた後 水と混和して下水処理設備に排出するために使用していたものであるが、以後は処理せずに廃油回収業者へ依頼することとし、油と洗剤を隣接して置くことはなくなった。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
通常検査に使用しているポリソルベートの分析法をアレンジすることで、早期に分析ができた。しかし、使用していた洗剤を当該菓子製造施設から入手することができなかったため、定量用のキャリブレータとして使用できず正確な定量に至らなかったことは、発症量や原因の詳細な推定の点で不十分な結果となった。

現在の状況:
検査担当者:3名
分析可能な機器:分光光度計(定性・定量)
高速液体クロマトグラフ質量分析装置(定性)

今後の課題:
他の界面活性剤にも対応ができるよう、分析法を検討したい。

問題点:
正確な定量結果があれば、1)菓子製造施設内でどのような行為があったか詳細な推定ができ、2)発症量の推定にもつながり、それらの情報が、より現実感のある衛生教育につながったと思われるが、それが得られなかったことは残念であった。

関連資料:
なし