No.23001 SFTS県内初事例ー富山県

[ 詳細報告 ]

分野名:ウィルス性感染症
衛研名:富山県衛生研究所
報告者:ウイルス部 谷 英樹
事例終息:事例終息
事例発生日:2022/11/09
事例終息日:2022/11/23
発生地域:富山県
発生規模:小
患者被害報告数:1
死亡者数:0
原因物質:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス
キーワード:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、マダニ媒介感染症、発熱、血小板減少、胃腸炎、下痢、刺し口、リアルタイムPCR、血清学的診断

概要:
 60歳代女性、発熱および食欲不振、倦怠感、関節痛、下痢等から近医を受診。痂皮および虫刺様の皮疹が認められたことから、リケッチア症が疑われ衛生研究所に全血および痂皮検体が搬入された。初めに実施したつつが虫病リケッチア、紅斑熱群リケッチアを検出するリアルタイムPCR検査は陰性であった。下痢が認められたことからSFTSウイルスのリアルタイムPCR検査を追加で実施し、SFTSウイルス遺伝子を検出した。血清学的検査でもSFTSウイルス特異的IgMおよびIgG抗体陽性を確認した。富山県内初症例となった。 

背景:
 富山県内では2021年までSFTS症例は確認されていなかった。県内医療機関より、ダニ媒介性感染症を疑われ衛生研究所に検体が搬入された。

地研の対応:
 リケッチア症疑いとして検体が搬入されたため、当所で、つつが虫病リケッチア、紅斑熱群リケッチアの同時検出リアルタイムPCRを実施し、陰性であった。症状に下痢が認められたことから、追加でSFTSウイルスのリアルタイムPCR検査を実施し、血液検体および痂皮からSFTSウイルス遺伝子を検出した。遺伝子陽性判明後に実施した間接蛍光抗体法によりSFTSウイルス特異的IgMおよびIgG抗体陽性も確認した。

行政の対応:
 検査結果判明の翌々日(翌日が祝日のため)、県庁厚生部から県内初症例が確認された旨をホームページで発表するとともに、県医師会に注意喚起を行った。

原因究明:
 管轄保健所(厚生センター)と協力し、患者家族、担当医から推定感染時の場所、作業内容等の聞き取り調査を実施している。推定感染場所へも出向き、周辺のマダニ生息調査等を行ったが、11月後半の時期ということもあり、マダニ採取には至らなかった。

診断:
 定量:リアルタイムPCR。定性・定量:間接蛍光抗体法

地研間の連携:
 なし

国及び国研等との連携:
 なし

事例の教訓・反省:
 本事例は、リケッチア症疑い事例として検査依頼されたため、最初はリケッチアの遺伝子検査のみを行っていた。追加でSFTSウイルスも検査したところ、SFTSウイルス陽性であることが判明した。ダニ媒介感染症疑い症例では、疑い疾患名にかかわらず、SFTSと日本紅斑熱、つつが虫病の3疾患を検査することが望ましいと考えられた。

現在の状況:
 SFTSウイルスと紅斑熱群リケッチア、つつが虫病リケッチアを同時検出するリアルタイムPCR法を開発し、2022年12月よりダニ媒介感染症疑い例の検査に使用している。

今後の課題:
 SFTSウイルス以外にも近年新たに発見されたダニ媒介感染症であるエゾウイルスやオズウイルスなどについても検査系を整備する必要があると考えられた。

問題点:
 診察する医師のダニ媒介感染症に関する知識向上と県内での流行地域の把握などの情報還元なども必要と思われた。

関連資料:
 【関連資料(例:研究所報告、行政報告、代表文献)】・研究所年報にて報告。・富山県で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群の1例 (IASR Vol.44 p42-43: 2023年3月号)

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