No.23002 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)発生事例についてー宮崎県

[ 詳細報告 ]

分野名:ウィルス性感染症
衛研名:宮崎県衛生環境研究所
報告者:微生物部 成田 翼
事例終息:報告日現在継続中
事例発生日:2022/8/1
事例終息日:
発生地域:宮崎県内
発生規模:
患者被害報告数:14
死亡者数:3
原因物質:SFTSウイルス
キーワード:重症熱性血小板減少症候群、白血球減少、血小板減少、38度以上の発熱、消化器症状、刺し口

概要:
 宮崎県では2022年8月1日から2023年7月31日の間、14名のSFTS事例が発生し、そのうち3名の死亡が確認された。患者年齢は50歳代2名、60歳代4名、70歳代4名、80歳代3名、90歳代1名で、死亡した患者の年齢は、1名が60歳代、1名が70歳代、1名が90歳代であった。症状は11例で38度以上の発熱、13例で白血球減少(4000/μL未満)、10例で血小板減少(10万/μL未満)、8例で消化器症状(下痢及び嘔吐)が認められた。刺し口は7例で確認され、7例は確認できないか又は不明であった。患者の発生月は2022年9月(1名)、10月(1名)、2023年2月(1名)、3月(2名)、5月(3名)、6月(4名)、7月(2名)で、県北部、県央部及び県南部を中心として発生していた。死亡患者の発生月は3名とも2023年6月で、県北部及び県央部で確認された。

背景:
 宮崎県はSFTS発生数が全国の都道府県中最も多い。

地研の対応:
 管轄保健所から検査依頼を受けた際には、速やかに検査を実施、結果を報告している。保健所及び医療機関からの疑義照会に対し、検査方法をはじめとした正確な情報の提供を行うとともに、宮崎大学農学部獣医学科や宮崎県獣医師会と連携し、イヌやネコなどの伴侶動物のSFTS感染状況の情報収集を進めている。

行政の対応:
 県のホームページ上で患者の推定感染地等について公表するとともに、県民に対し、ポスター及びマスコミ等を使ったマダニに噛まれないための注意喚起を行っている。

原因究明:
 管轄保健所と協力し、患者及び家族、担当医らから推定感染時の場所、作業内容等の聞き取り調査を実施している。SFTS患者から分離されたSFTSVの遺伝子型の解析を行うことによる地域特性等の調査を実施している。
 また、SFTSVの全ゲノム解析により、ウイルスのアミノ酸変異と病原性の関係について調査を行っている。:

診断:
 定性:RT-PCR

地研間の連携:
 2018年9月に設立されたSFTS学術研究会に参加するとともに、九州内の地方衛生研究所を中心に情報の共有を図っている。

国及び国研等との連携:
 RT-PCRによる判定が難しい検体については、国立感染症研究所に検体を送付し、確認検査を依頼している。

事例の教訓・反省:
 第1例発生以降、県民に対しSFTS及びマダニに対する注意喚起を行っているが、患者は現在も毎年数例発生しているため、さらなる周知方法の検討が必要であり、衛生環境研究所として有益な調査結果の提供に努めたい。

現在の状況:
 RT-PCR法による検査について、技術的な問題はない。IFA及び、ELISA抗体検査についても検査できる体制にある。
 S、M、Lの各分節について、独自のプロトコルで全ゲノム解析を行っている。

今後の課題:
 SFTSVはマダニと動物で感染環を形成し、野生動物の生活圏にヒトが入ることによってヒトが感染、発症するとされている。推定感染時の行動状況はほとんど野外での作業(散歩等も含め)であり、これらの際のマダニ対策の注意喚起が必要である。同時に伴侶動物であるイヌやネコからの感染事例も報告されているため、ダニ媒介感染症としてだけではなく、人獣共通感染症としても対策の検討が必要となってきている。

問題点:
 診察をする医師、獣医師、地方衛生研究所、行政機関との緊密な連携

関連資料:
 宮崎県衛生環境研究所年報「SFTS検査依頼件数及び届出保健所別検出件数」、「SFTS患者発生状況」

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