No.1229 刑務所の給食を原因とした毒素原性大腸菌による集団食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:千葉市環境保健研究所
発生地域:千葉市内の刑務所および少年鑑別所
事例発生日:2005年8月27日
事例終息日:2005年8月29日
発生規模:患者数401名
患者被害報告数:
死亡者数:0名
原因物質:毒素原性大腸菌
キーワード:毒素原性大腸菌、ETEC、食中毒、給食

背景:

概要:
2005年8月27日から8月29日にかけて、千葉刑務所と少年鑑別所の収容者が、水様性の下痢、腹痛、頭痛、吐き気および発熱の食中毒症状を呈した。保健所の調査の結果、両施設の食事は刑務所の給食施設で一括調理し、少年鑑別所にも車で配送・提供していた。発症者は、収容者1,310名中401名に達していることが判明した。
細菌学的検査の結果、81名の患者便(調理従事者便含む)および検食の「白菜キムチ漬け」から毒素原性大腸菌(ETEC)が検出された。

原因究明:
検査の結果、検食の白菜キムチ漬け1検体と刑務所の患者便64検体(調理従事者便6検体を含む)、少年鑑別所の患者便17検体からLT/ST両毒素産生の毒素原性大腸菌O6:H16が検出された。調理従事者は、ローテーションにより調理を行っていた受刑者で、本食中毒発生以前に体調不良は認められず、給食を喫食後に症状を訴えていた。検出された18菌株(白菜キムチおよび患者由来)の制限酵素XbaIによるPFGEパターンは全て同一であった。これらのことから、本事例は8月27日昼食に提供された「白菜キムチ漬け」を原因食品とする毒素原性大腸菌による食中毒と断定された。なお、原材料の白菜とキムチの素については当該菌は陰性であり、感染経路については特定できなかった。原因食品の「白菜キムチ漬け」のETEC汚染菌数は10~40/gであり、一人前は約25gであり、全て喫食したと仮定すると摂取菌量は102~103個と推側された。また、検食の保存は喫食から3時間(室温、約35℃に放置)後に採取していることを考慮すると、極めて少ない菌量での発症が示唆された。

診断:

地研の対応:
保健所からの依頼により、施設の拭き取り11検体、検食49検体(3日分の調理品)、原材料(白菜とキムチの素)2検体、刑務所の患者便75検体(調理従事者便6検体を含む)、少年鑑別所の患者便18検体について食中毒菌検索を実施した。

行政の対応:
千葉市保健所は、給食が原因と断定し調理施設を8月30日から9月1日までの3日間の業務停止処分とした。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
保健所の調査の結果、以下の点が判明した。調理場は窓が少ないために換気が不十分で、室温は常に35℃前後の作業環境であった。原因食品の白菜キムチ漬けの調理工程は、提供する2日前に白菜を塩もみし冷蔵庫に保管され、当日に水切り後キムチの素と混合した。これらの作業は、ビニール製の長手袋を使用し、使用後は洗剤で洗い使いまわしがされていた。白菜キムチ漬けは調理後喫食まで4時間35℃前後の室温下で放置されていた。こららのことから、再発防止には、施設管理者および調理従事者への、加熱工程のない食品の取り扱いについての衛生管理・衛生教育の徹底が必要であると思われた。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: