No.15006 寿司店における大規模ノロウイルス食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2016/05/13
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福岡市保健環境研究所
発生地域:福岡市城南区
事例発生日:2015年4月9日
事例終息日:2015年5月1日
発生規模:寿司店を利用した314名中215名
患者被害報告数:215名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGII.17(GII/11)
キーワード:ノロウイルス,従業員,寿司店,営業禁止

背景:
福岡市における2014/15シーズンのノロウイルスを原因とする食中毒事例では,これまで検出例の少なかった遺伝子型(GII.17型)のノロウイルスが多く検出された。
今回,2015年4月にノロウイルス(GII.17型)を原因とする寿司店による食中毒の大規模事例が発生したので報告する。

概要:
2015年4月8日から13日までの期間に,福岡市内の寿司店を利用した314名中215名が4月9日から15日にかけて,下痢,嘔吐等の食中毒様症状を呈し,有症者便14名中12名,従業員便15名中9名から,ノロウイルスGIIを検出した。有症者には,店舗での飲食の他,仕出しの利用者も含まれていた。保健所では,疫学調査の結果も踏まえ,4月8日から4月13日の期間に寿司店で提供された食品を原因とするノロウイルス食中毒と断定した。また,検出されたノロウイルスのPCR増幅産物をダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し,系統樹解析を行ったところ,すべてノロウイルスGII.17型であった。

原因究明:
患者便14検体,患者吐物3検体,従業員便15検体,施設の拭き取り11検体の計43検体について,ノロウイルスの検査を実施し,患者便12検体,患者吐物1検体,従業員便9検体から,ノロウイルスGIIを検出した。施設の拭き取りからはノロウイルスは検出されなかった。
ノロウイルスが検出された調理従事者複数名は,食中毒様の症状を呈していた。
ノロウイルスGIIを検出した患者便12検体,患者吐物1検体,従業員便8検体の計21検体について,遺伝子解析を実施したところ,すべてノロウイルスGII.17であった。
従業員の聞き取りから,4月7日に施設利用者が客席にて嘔吐し,調理従事者複数名が4月11日及び12日にかけえて食中毒様の症状を呈していることが判明した。
以上のことから,何らかの原因でノロウイルスに汚染された施設や調理器具から,従業員に感染し発症するなか,不十分な手洗いや従業員の健康管理の不徹底,施設の衛生管理不備により,施設内における2次感染が発生し,6日間に渡ってノロウイルスに汚染された食品が提供され,今回の事例が発生したと推測されたが,原因食品やその汚染経路の特定には至らなかった。

診断:

地研の対応:
搬入された患者便14検体,患者吐物3検体,従業員便15検体,施設等の拭き取り11検体について,ノロウイルスの構造蛋白(Capsid)領域のプライマー(GI:COG1F/G1-SKR1,GII:COG2F/G2SKR)を用いてPCR検査を実施した。陽性検体については,ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し,系統樹解析を行った。

行政の対応:
保健所は,探知した4月13日から調査を開始した。
当該施設は,4月13日から自主休業し,4月15日に営業禁止となった。
保健所は,4月24日に調理従事者向け衛生講習会,4月28日に全従業員向け衛生講習会,5月1日に施設及び衛生管理体制の改善を確認し,同日営業禁止を解除した。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: