No.1057 給食献立きなこねじりパンによるノロウイルス食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:北海道立衛生研究所
発生地域:北海道
事例発生日:2003年1月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:661名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルス
キーワード:ノロウイルス、感染性胃腸炎、集団発生、学校、給食

背景:
ノロウイルスは、平成9年(1997年)の食品衛生法の改正以降、食中毒の原因病原体の一つとして、「小型球形ウイルス(SRSV)」に包括されていたが、平成15年(2003年)8月に食品衛生法等の一部を改正する法律の一部が施行され、名称が食中毒事件票に明記されることとなった。ノロウイルスは、毎年、初冬から春先にかけて多発するウイルス性食中毒の原因のほとんどを占めるものである。今年始め、ノロウイルスに汚染されたパンが学校給食で提供され、大規模な集団食中毒が発生した。その概要について報告する。

概要:
本事例は、A町小中学校16校の児童生徒及び教職員1,438名のうち661名が、学校給食で提供されたミニきな粉ねじりパンを介してノロウイルスに感染し、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸炎症状を呈した集団食中毒事例である。
2003年1月24日、北海道A町の町立病院から小学生複数名が食中毒様症状を呈し受診している旨、管轄保健所に連絡があった。その後、受診する者は増え続け計511名が治療を受けた。管轄保健所は、患者検体の採取及び疫学調査の実施と共に、A町学校給食センター、学校給食センターに納入しているパン製造施設、麺製造施設の3施設において聞き取り調査を行い、同時に食材の回収、調理従事者の検便を行った。採取された食材、有症者便及び吐物、学校給食センター従事者便、パン製造施設従事者便、麺製造施設従事者便、各施設拭き取り検体を細菌検査に供したが本事例に関与したと推定される病原細菌は検出されなかった。一方、衛生研究所では、有症者便及び吐物、上記の各施設従事者便、22日から24日にかけての保存食及び食材についてウイルス学的検査を行った。その結果、有症者便及び吐物、学校給食センター従事者便、パン製造施設従事者便からノロウイルスが検出され、遺伝子解析の結果、検出されたノロウイルスの遺伝子型は全て一致した。この時点では食品からノロウイルス遺伝子は検出されなかった。その後、1月23日に学校給食を喫食しなかった生徒及び教職員には発症者がいないことが判り、23日に提供された給食の製造行程を検討し直したところ、パン製造施設従事者が、加熱後のねじりパンに塗すきな粉と砂糖の混合を素手で行っていたことが判明した。そこで、パンに付着したきな粉砂糖のみを掻き取り、再度遺伝子検査を行ったところ、ノロウイルス遺伝子が検出され、遺伝子型が有症者及び従事者のものと完全に一致した。パン製造施設の従事者自身もきな粉砂糖によってノロウイルスに感染した一人である可能性は否定できないが、きな粉や砂糖が仕入れの段階で既にウイルスに汚染されていた場合、事態は小中学校の集団食中毒にとどまらないと思われたことから、その可能性は極めて低いと考えられた。従って、本事例は、ノロウイルスの侵入経路は明らかにできなかったものの、従事者も含めたパン製造施設がウイルスの拡散に関与し集団食中毒を引き起こした事例であると判断された。

原因究明:
本事例は、原因となったノロウイルスが、二枚貝以外の食品から検出された稀なウイルス性食中毒事例であった。原因食品の絞り込みには、ウイルスの伝播経路を考慮した視点が不可欠であることを再認識させられた。

診断:

地研の対応:
保健所経由で搬入された有症者便23検体、吐物20検体、学校給食センター従事者便13検体、パン製造施設従事者便7検体、麺製造施設従事者便5検体、保存食及び食材35検体についてウイルス検査を行った。

行政の対応:
発症者が多数発生したことをうけA町は、児童生徒腹痛嘔吐対策本部を設置し、町内防災無線で保健所からの指導内容である手洗いやうがいなどの感染予防方法について全町民に連絡を行った。また、管轄保健所は、A町対策本部に職員を継続的に派遣し、有症者の発生状況などの情報を即時入手することによって、原因究明及び二次感染予防対策の迅速な実施に努めた。原因病原体同定の後、管轄保健所は、パンを製造した営業者に対し8日間の営業停止を命じ、その間、施設の清掃消毒及び従業員の衛生教育を徹底するよう指示した。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
検査は、国立感染症研究所の作成したウイルス性下痢症診断マニュアル(第2版、平成12年(2000年)7月10日発行)に基づいて実施した。

事例の教訓・反省:

現在の状況:
現在のところ、技術、体制、整備等については、今後の発生に対しても対応可能と考えている。

今後の課題:
ノロウイルス拡散の原因となった施設において、食品が衛生的に取り扱われるよう配慮されていたなら、今回の様な集団食中毒は未然に防がれた可能性が高い。従って、この様な食中毒被害を防止するためには、食品製造の現場における衛生管理意識を一層高めることが重要であると考えられた。

問題点:

関連資料:
1) 鹿野健治、伊達宏達、中本あづさ、古崎典子、紀伊勤、虻川裕、古川保雄:パンを原因とした小型球形ウイルス(SRSV)による食中毒事例~加工食品からSRSVを検出~:平成15年度全道食品環境衛生研究発表会資料、25-28(2003)
2) 三好正浩、吉澄志磨、佐藤千秋、奥井登代、鹿野健治、伊達宏達、中本あづさ、古崎典子、紀伊勤、虻川裕、古川保雄:学校給食で提供されたパンを原因としたノロウイルスによる食中毒事例-北海道:病原微生物検出情報,24,12,7-8(2003)