No.1532 飲食店での赤痢菌Shigella sonneiによる感染事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福島県衛生研究所
発生地域:福島県いわき市
事例発生日:2011年9月11日
事例終息日:2011年10月6日
発生規模:
患者被害報告数:8名
死亡者数:0名
原因物質:S. sonnei
キーワード:赤痢菌、Shigella sonnei、集団感染事例

背景:
2011年8月に外食チェーン店が原因とされた赤痢菌Shigella sonneiの広域集団感染事例が青森県、宮城県、山形県、福島県において発生した。本事例は、それとほぼ同時期に発生しておりその関連性が強く疑われた事例である。

概要:
2011年9月に県内の飲食店においてS. sonneiによる感染事例が起きた。患者は、喫食者4名、喫食者の家族(二次感染疑い)1名、飲食店の経営者とその家族3名の計8名で、菌は8株が分離された。喫食患者が当該飲食店を利用した日は、他にもう1グループの利用があったが、このグループの喫食者は無症状であった。また、本事例とほぼ同時期に、外食チェーン店での食事が原因とされたS. sonneiの広域集団感染事例が発生していたことから、その関連が疑われたが、疫学調査からは関連を明らかにすることはできなかった。しかし、PFGE、MLVA解析および薬剤感受性試験結果から、二つの事例の原因菌は同一であることが強く示唆された。

原因究明:
患者8名から分離されたS. sonnei 8株のPFGEパターンは同一であった。また、ほぼ同時期に起こっていた外食チェーン店の広域集団感染事例の由来株との比較を行ったところ、同一パターンであることが明らかとなった。しかし、患者は当該外食チェーン店では喫食しておらず、これらとの関連は明らかとはならなかった。

診断:

地研の対応:
本事例における原因究明のための検査は、いわき市保健所の検査課で実施し、分離菌のPFGE解析および薬剤感受性試験は当所で行った。

行政の対応:
いわき市保健所では、赤痢患者発生届出受理後、感染症担当課と食品担当課共同で、患者・接触者調査、喫食・行動調査を実施し、さらに当該施設の従事者等の糞便や保存食品および施設の拭き取り物の検査を行った。従事者1名(経営者兼主たる調理者)から赤痢菌が検出されたが、疫学調査から提供食が感染原因との確定に至らなかった為に、感染症法上の就業制限措置を行った。また、食品衛生上の観点から施設内の消毒を指示し、患者・家族に対し二次感染予防の指導を行った。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所へ菌株を送り、全国で分離された菌株とMLVA解析を行い比較したところ、他県で分離された外食チェーン店の広域集団感染事例の由来株と同一パターンであることが明らかとなった。

事例の教訓・反省:
本事例の発生の少し前には、同一外食チェーン店での東北地方における赤痢の広域集団感染事例が発生しており、PFGE、MLVA解析により2事例が同一由来の株であることが強く示唆され、本事例は先の事例の二次感染・三次感染から引き起こされた事例である可能性があったが、疫学調査からその因果関係は明確にはできなかった。

現在の状況:

今後の課題:
疫学調査からは、本事例の赤痢菌の感染経路の特定には至らなかった。しかし、近年赤痢菌は症状が比較的軽く、無症状保菌者となる報告もあることから、先行していた広域集団感染事例からの二次感染であることが可能性の一つとして挙げられた。感染拡大を防ぐためにも、保健所は様々な状況に対応できる疫学調査体制の構築やサーベイランス等の分析、市内医療機関との迅速な情報共有体制の整備をすすめる必要があり、衛生研究所は感染源調査等において菌株の迅速な解析、情報還元を行う必要があると思われる。今後このように関係機関の連携を強化していくことで感染拡大の防止につながると思われる。

問題点:

関連資料:
福島県保健衛生雑誌、第22巻・特別号、34