No.1533 カエデドコロ(ヤマノイモ科ヤマノイモ属)による食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:和歌山県環境衛生研究センター
発生地域:和歌山県橋本市
事例発生日:2009年10月
事例終息日:
発生規模:喫食者1名
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:カエデドコロの有毒成分 ジオスシン
キーワード:カエデドコロジオスシンジオスゲニン HPLC LCMSMS

背景:
自然に触れ親しみ,山菜やキノコなど自然のものを食することで心身共に健康になると考える人が多くなり,誤食による食中毒事例が増加している。

概要:
自宅の庭に自生していた自然薯を,昼食にすり下ろして喫食したところ,夕方から嘔吐,下痢症状を呈し,近隣医で緩下剤と整腸剤を処方してもらったがその後も症状が続き,和歌山市内の病院を受診したという事例があった。症状や検査値等から自然薯以外のイモを喫食したために起こった可能性が高いということで,そのイモを和歌山県立自然博物館で鑑定したところ,自然薯とよく似ているヤマノイモ科ヤマノイモ属の「カエデドコロ」の根茎と判明した。「カエデドコロ」には,ステロイド配糖体の「ジオスシン」とその非糖部である「ジオスゲニン」などの成分が含まれている。「ジオスシン」には溶血作用があり,大量に食べると嘔吐などを引き起こすと言われている。
そこで,「カエデドコロ」の有毒成分とされている「ジオスシン」と「ジオスゲニン」について,標準品を和光純薬工業より入手(4ケ月要した)後,分析した。

原因究明:

診断:
残品のイモ(4ケ月保存)から「ジオスシン」1,500ppm,「ジオスゲニン」450ppm検出した。

地研の対応:
(同時迅速分析法)
試料1gにメタノール30mLを加えて,15分間超音波抽出し,No.5Aろ紙でろ過後,上清を30mLに定容し,PTFEフィルターでろ過後,HPLCにて分析(LCMSMS確認)した。
(分析条件)
I UHPLC(定量)装置:Waters Acquity H-Class
カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18 (2.1mm i. d. x 50mm, 1.7μm)移動相:55%アセトニトリル溶液(0.46分)→(0.77分)→85%アセトニトリル溶液(1.16分)
検出器:PDA定量波長:205nm注入量:2μL流量:0.9mL/minカラム温度:40℃
II LC/MS/MS(確認)
LC装置:Waters LC2795
カラム:Waters Symmetry C18(2.1mmi.d.x150mm,5μm)
移動相:(A)0.05%酢酸,(B)0.05%酢酸含有アセトニトリルA:B=50:50→(15分)→10:90(10分)
流量:0.2mL/minカラム温度:40℃注入量:5μL
MSMS装置:MICROMASS Quattro Ultima Ptイオン化モード゙:ESI(+)コーン電圧:(ジオスシン)45V(ジオスゲニン)35Vコリジョンエネルギー:(ジオスシン)16eV(ジオスゲニン)17eVモニターイオン:(ジオスシン)869.3→397.1415.2293.0(ジオスゲニン)415.3→271.0253.2283.2

行政の対応:
喫食者に対し,自然毒による中毒防止についての注意事項を指導した。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:

問題点:
標準品を入手するのに4ケ月要した。

関連資料:
久野恵子他:健康危機管理に対応した自然毒一斉分析法の検討-有毒植物および毒きのこ19成分-全国衛生化学協議会年会講演要旨集,48,118-119(2011)
[資料参照]