建築・施設管理研究領域の活動

 建築・施設管理研究領域では、建築環境の物理的・社会的な質とその利用者の活動との関連性を解明しようとしています。建物の水準に関する日本の法的規制は建築基準法によるところが中心ですが、それは建物を建てる時点における最低基準であるために建築後の使われ方は対象外となり、人の健康や福祉という観点からは不十分な点が少なくありません。したがって、そこを補う基準・指針づくりや啓発のために、根拠となるデータを得ることが求められています。おもに対象としているのは、以下の3つの建築用途です。
 ひとつは、いわゆる建築物衛生法が対象としている特定建築物であり、一定規模以上のオフィスビルなどが含まれます。この法律は利用者の健康を守ることに貢献していますが、近年、相対湿度など室内空気の衛生管理
基準に不適合となる建築が増加傾向にあり、その原因究明と対策が課題となっています。
 住居は健康・福祉の基盤であり、先進諸国が有する住居法を持たない日本ではとりわけ多くの課題を有しています。WHO が提示しているHealthy Housing の要件なども踏まえて、シックハウス、結露やカビから高齢者・障碍者の住環境整備などまで幅広いテーマをあつかっています。
 さらに、医療・福祉サービスを提供する施設、たとえば病院や社会福祉施設の建築計画・管理運営についても研究対象としています。これらの施設においては、適切な治療・療養環境の確保という視点と、医療・福祉サービスの効率的・効果的な提供という視点のいずれにも考慮する必要があります。